面接や面談時の交通費や宿泊費|遠方の採用候補者に企業は支給すべき?

遠方の採用候補者に 企業は支給すべき?

採用活動においては、企業ごとに優秀な人材を確保するための戦略が練られます。その中でも、企業側が実施に迷いやすい取り組みのひとつが「遠方の採用候補者に対する選考時の来社にかかる交通費の支給」です。 

求職者にとってはうれしい交通費支給ですが、企業にとっては負担が大きく、どのように判断すれば良いのか迷いますよね。今回は、社会のトレンドや人事・採用担当者向けメディアとしての知見をもとに、採用候補者に交通費を出すべきかという論点に迫ります。

結論から言うと「どちらでも良い」

はじめに結論を述べると、採用候補者に交通費を支給するかどうかは、企業の任意で決められます。法律に支払い義務はないため、仮に支給しなくても法的には何も問題ありません。

交通費支給の有無に限らず、支給方法や支給対象などは企業ごとにバラバラです。たとえば、「2次面接から支給」「最終面接のみ支給」「距離に限らず全員に支給」などの支給要件があります。ただし、実情としては、「遠方からの候補者にのみ支払う」としているケースが多いようです。

なお、採用候補者に対する交通費の支給方法には、以下の例があります。

交通費の支給方法
実費支給 採用候補者が実際に負担した交通費を全額支給する方法。もっとも不公平が生じない支給方法である一方、遠方であるほど企業の金銭的負担が大きくなるデメリットもある。
上限支給 基本は実費支給としたうえで、「最大2万円」など、支給金額に上限を設ける方法。金額によっては採用候補者本人への負担が生じるが、企業側のコストを抑えやすいメリットがある。
一律支給 距離や交通手段などに関係なく、全員に同じ金額を支給する方法。採用候補者によって、実際の交通費を上回るケースや下回るケースがある。

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採用候補者への交通費支給で採用力アップ!

採用候補者への交通費支給は法的に不要ですが、実際には多くの企業が実施しています。採用候補者に交通費を支給することで、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

入社意欲を高められる

もっとも大きいメリットは、採用候補者の入社意欲を高められる点です。多くの場合、交通費の支給は、採用候補者が企業に良いイメージを持つひとつのきっかけとなります。特に、最終面接などの採用に近い段階で支給すれば、入社への後押しとなる可能性は高いでしょう。

では、求職者にとって交通費支給はどの程度のメリットなのでしょうか。下記は、株式会社ZENKIGEN様による、就職活動におけるWeb面接のメリットを調査した結果です。

blank(出典:就職活動におけるWeb面接実態調査|株式会社ZENKIGEN
「移動時間や交通費・宿泊費を節約できる」がトップとなっています。応募しやすさや話しやすさなどの、合否に直接関係する要素を上回っていることから、交通費の節約は求職者にとって非常に魅力的だと言えるでしょう。

特に多くの学生は、親からの仕送りやバイト代で生活しているケースが多いため、経済的な余裕はありません。ただでさえ余裕がない状況で、就活用にスーツやカバン、靴などを買い直すこともあるため、少しでも節約したいと考える学生は多いようです。

そのため、交通費の支給は、応募者が企業に良いイメージを持つ、または良いイメージを強くして入社意欲に影響を与えるきっかけになります。特に新卒一括採用の際は、交通費支給がもたらすメリットが大きいと言えます。

応募者を増やせる

応募数自体を増やせるメリットもあり、優秀な人材と出会える可能性が高まります。

求職者が応募先を検討するにあたって、交通費支給は魅力的なポイントです。また、現在はWeb面接が浸透しているため、就職活動における「距離」へのハードルが下がっています。求職者は、以前よりも幅広い求人に目を向けている現状です。求人情報などに交通費を支給する旨を記載することで、多くの求職者の関心を引けるでしょう。

さらに、インターネットが普及している近年は、企業へのイメージや就職活動の感想が、SNSなどで共有されるケースも多々あります。交通費支給している情報が共有されることで、求職者全体へのイメージアップにつながる点もメリットです。

ただし、「交通費支給があること」を理由に志望する求職者は、実際の志望度が低いケースもあります。本当に自社を志望しているのか、面接時にしっかり見極めることが重要です。

コスト面でのデメリットも……

交通費の支給は、採用コストが大きくなる点がデメリットです。遠方からの交通費・宿泊費を支払うとなると、1回の往復でも大きな額となります。たとえば、年間100人の求職者に対して東京~大阪の新幹線代を支払った場合、総額は2,944,000円です。

【例:東京~大阪の新幹線代を年間100人の求職者に支給した場合】
東海道新幹線・普通車指定席の往復料金(1人分):片道14,720円×2=29,440円
総額(100人分):29,440円×100人=2,944,000円
※記載している新幹線代は2021年5月現在の料金です

特に、新型コロナウイルスの影響で業績が悪化している企業は、できるだけ採用コストを抑えたいのではないでしょうか。

条件の設定次第で、採用コストの節約が可能です。たとえば、「〇〇地方からの求職者にのみ支給する」「直線距離で300キロ以上離れている求職者に支給する」など、地方や距離を限定する方法があります。

優秀な人材が企業にもたらす利益を考えれば、将来的な費用対効果は大きいでしょう。現在は少子高齢化による労働人口の減少が続いていることから、人材を前倒しで確保する動きも強まっています。

採用コストと企業への利益を整理しながら、長期的な目線で検討することも重要です。

各企業の採用過程に応じた決定が重要

交通費支給を検討するにあたっては、「採用過程のどの段階で行うか」も重要なポイントです。各段階における重要度や採用予定人数、予算規模などのバランスを考えた判断が必要となります。

たとえば、3次面接まである場合、1次面接で多数の応募者を落とすのであれば、2次面接で交通費を支給しても企業の負担は大きくなりません。一方で、ある程度の人数を2次面接に残す場合は、2次面接での交通費支給は採用コストがかさみます。

また最近は、新型コロナウイルスの影響もあり、Web面接が主流です。採用過程の序盤はWeb面接を行い、最終面接で、対面の面接をする企業は多い傾向にあります。

採用者が移住する場合は?

遠方の人を採用した場合、ほとんどの人は会社近くに移住してきます。移住にあたっては、移動だけでなく、引っ越しや家具の購入など大きな費用が発生するため、可能であれば企業側で全額または一部負担することが望ましいのではないでしょうか。

なお、就職活動にあたっては求職者が会社を訪れるケースが一般的ですが、採用担当者が求職者の居住地に出向いて説明会や面接を行う場合もあります。特に、地方の企業が東京圏の求職者を採用する場合に行われる傾向です。

地方企業が東京圏からの人材を採用する場合に活用できる制度が「中途採用等支援助成金(UIJターンコース)」です。採用にあたって発生したPR費用や旅費などが助成対象となります。

中途採用等支援助成金(UIJターンコース)
概要 移住者の雇用促進などを目的とし、東京圏からの移住者を雇用するにあたって要した経費の一部が助成される制度です。
主な受給要件 採用計画を作成・提出し、計画期間内に対象労働者を1人以上雇用した場合
支給対象
  • 採用活動にかかるパンフレットの作成・印刷経費
  • 採用サイトやPR動画の作成・改修経費
  • 就職説明会や出張面接にかかる旅費や宿泊費などの実施経費(オンライン含む)
  • 社労士や中小企業診断士などの外部専門家によるコンサルティング費用
支給額
  • 中小企業:助成率1/2
  • 中小企業以外:助成率1/3

※いずれも100万円が上限

(出典:中途採用等支援助成金 UIJターンコース|厚生労働省

中途採用等支援助成金(UIJターンコース)は、移住者に対する採用活動に要した費用が、幅広く助成されます。東京圏からの採用を検討している企業にとっては、採用活動を成功させるための、大きな助けとなるのではないでしょうか。

企業の方向性や候補者の状況から判断しよう

遠方の採用候補者に対する交通費支給は、企業ごとに払う・払わないを決められます。企業としての方向性や候補者の状況など、実情を踏まえた交通費支給の判断がおすすめです。

ただし、採用候補者の中には、企業がどうしても欲しい人材や、あまりにも遠方から来る人材もいるかと思います。企業がどうしても欲しい人材であれば、少しでも入社してくれる可能性を高めるために、交通費・宿泊費を支給することがおすすめです。また、遠方にもかかわらず来てくれた応募者に感謝の意を表す意味でも、交通費を負担してあげることが望ましいと言えます。

皆さまの採用活動をより効果的にするために、本コラムの内容が参考になれば幸いです。

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この記事を書いた人
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採用Webマラボ編集部

採用に関するお悩みならお任せ!採用業界に精通しており、Indeedや求人ボックスなどの求人検索エンジンから、リスティング・ディスプレイ広告などまで幅広い知識を持った、採用Webマーケティングのコンサルタントなどが記事を執筆していますm(_ _)m

監修者
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辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を作り出した。
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