- この記事を読むと、学生のアルバイトを雇用する際、加入が必要な社会保険の種類と手順が理解できます。
- 労災保険は学生に関係なく加入が必要です。また、その他の社会保険も条件によっては学生でも加入が必要になります。
- 労働保険の加入は事業別に手続き方法が異なるため注意が必要です。提出書類・提出先・提出期限を記事内の表にまとめていますのでご参考ください。
難しい手続きを踏まなくても、すぐに働いてもらうことのできる学生のアルバイト。人手不足に悩む飲食店や小売店などにとっては、なくてはない貴重な戦力ですよね。
しかし、「学生バイトだから社会保険への加入は必要ない」と思っていませんか?
実は、条件を満たせば学生バイトでも本人の意思と関係なく加入が義務付けられています。そこで今回は、学生バイトの社会保険への加入条件や手順、注意点などをわかりやすく解説します。
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目次
社会保険の種類って?
そもそも、一般的によく聞く社会保険ですがこれは「社会保険」という1つの保険を意味するものではありません。
社会保険は、大きく分けて「労働保険」と「(狭義の意味での)社会保険」の2種類に分類されています。
さらに「労働保険」は2つ「(狭義の意味での)社会保険」は3つの保険で構成されています。
ここでは、それぞれの保険概要と加入条件について解説します。
労働保険
労働保険は「労災保険」と「雇用保険」の2種類から構成されている、雇用者の保護を目的とした保険です。
労災保険(労働者災害補償保険)
<保険概要>
業務中や通勤中に被った、傷病/障害/死亡などの事態において、医療費などが全額給付される保険です。保険料については事業主側が全額負担し、雇用者による負担はありません。
<加入条件>
雇用形態にかかわらない、全ての労働者の加入が義務づけられています。
雇用保険
<保険概要>
雇用者が失業した場合や雇用の継続が難しくなった場合の生活補助や再就職援助のため、失業期間中にも一定額の給付が受けられるようになる保険です。
<加入条件>
以下の条件をすべて満たす場合に加入が義務付けられています。
- 週に20時間以上働いている方
- 1ヵ月以上(31日以上)働くことが見込まれている方
- 昼間学生ではない方
→しかし以下の場合は昼間学生であっても適用対象となります
-
- 卒業見込証明書を有していて、卒業後も同一の企業で勤務予定の方
- 休学中の方(事実を証明する書類が必要となります)
- 事業主の指示や承認のもと、大学院などに在席している方
- 通信教育/夜間/定時制の学校の学生の方
(狭義の意味での)社会保険
(狭義の意味での)社会保険は、「健康保険」と「介護保険」と「厚生年金保険」の3種類から構成されている、生活の安定を目的とした保険です。
健康保険
<保険概要>
雇用者が医療機関を受診する際に、一定の負担割合で受診することができたり、出産のために会社を休んだ時に手当金を支給されたりする保険です。原則、月給に応じて事業主と雇用者とで1/2ずつ負担します。
<加入条件>
1週間の所定労働時間および1ヵ月の労働日数が常時雇用者(正社員など)の4分の3以上である場合は、雇用形態に関わらず加入が義務づけられています。 また、上記条件を満たさない場合でも、以下の条件をすべて満たす場合は加入が義務付けられます。
- 週に20時間以上働いている方
- 1年以上継続して働くことが見込まれている方
- 賃金の月額が8.8万円(年収106万円)以上であること
- 常時500人を超える被保険者を雇用する企業、または500人以下で過半数が保険加入に合意した企業に勤めていること
- 昼間学生ではない方
→しかし以下の場合は昼間学生であっても適用対象となります
-
-
- 卒業見込み証明書を有していて、卒業後も同一の企業で勤務予定の方
- 休学中の方(事実を証明する書類が必要となります)
- 事業主の指示や承認のもと、大学院などに在席している方
- 通信教育/夜間/定時制の学校の学生の方
-
介護保険
<保険概要>
日本全体で、介護を必要とする高齢者を支えるための保険です。加入者が要介護認定を受けてから介護サービスを利用できるようになります。原則、月給に応じて事業主と雇用者とで1/2ずつ負担します。
<加入条件>
原則として40歳以上の全国民の加入が義務づけられています。
厚生年金保険
<保険概要>
65歳の定年退職後、加入した期間と納めた保険料に応じて年金が給付される保険です。原則、月給に応じて事業主と雇用者とで1/2ずつ負担します。
<加入条件>
健康保険の加入条件と同様です。1週間の所定労働時間および1ヵ月の労働日数が常時雇用者(正社員など)の4分の3以上である場合は、雇用形態に関わらず加入が義務づけられています。 また、上記条件を満たさない場合でも、以下の条件をすべて満たす場合は加入が義務付けられます。
- 週に20時間以上働いている方
- 1年以上継続して働くことが見込まれている方
- 賃金の月額が8.8万円(年収106万円)以上であること
- 常時500人を超える被保険者を雇用する企業、または500人以下で過半数が保険加入に合意した企業に勤めていること
- 昼間学生ではない方
→しかし以下の場合は昼間学生であっても適用対象となります
-
- 卒業見込み証明書を有していて、卒業後も同一の企業で勤務予定の方
- 休学中の方(事実を証明する書類が必要となります)
- 事業主の指示や承認のもと、大学院などに在席している方
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社会保険加入時の注意点とは?
以上、学生バイトであっても一定の条件を満たせば保険の加入義務が発生します。
そのため、学生によっては給与の手取り額が減ることから社会保険への加入を希望しない場合が多いと思います。
事前に社会保険についての説明を行い、学生が社会保険への加入を希望しない場合は、加入の適用範囲外で働けるよう調整しましょう。
社会保険に加入する際の手順
最後に、加入義務が生じる「労災保険」「雇用保険」と、学生バイトでも加入義務が生じる場合のある「健康保険」「厚生年金保険」のそれぞれの申請手順について解説します。
労働保険の加入手続
労働保険加入の手続きにあたり、事業別に手続き方法が異なります。
一般的な農林漁業・建設業は労災保険と雇用保険の適用の仕方を区別する必要があり、「二元適用事業所」として労災保険と雇用保険を区別して適用します。
上記以外の事業所は「一元適用事業所」となり、労災保険と雇用保険の申告・納付を一括で扱います。
労災保険
【提出書類・提出先・提出期限】
事業の種類 | 提出書類 | 提出先 | 提出期限 |
一元適用事業所 | 保険関係成立届 | 所轄(被保険者が勤務する事業所地域)の労働基準監督署 | 保険関係が成立した翌日から10日以内 |
概算保険料申告書 | 所轄の労働基準監督署 所轄の都道府県労働局 日本銀行(歳入代理店や郵便局でも可能) | 保険関係が成立した翌日から50日以内 | |
二元適用事業所 | 保険関係成立届 | 所轄の労働基準監督署 (参照:全国労働基準監督署の所在案内) | 設置の翌日から10日以内 |
概算保険料申告書 | 所轄の労働基準監督署 所轄の都道府県労働局 日本銀行(歳入代理店や郵便局でも可能) | 保険関係が成立した翌日から50日以内 |
雇用保険
【提出書類・提出先・提出期限】
事業の種類 | 提出書類 | 提出先 | 提出期限 |
一元適用事業所 | 雇用保険適用事業所設置届 | 所轄(被保険者が勤務する事業所地域)の公共職業安定所(ハローワーク) (参照:全国ハローワークの所在案内|厚生労働省) | 設置の翌日から10日以内 |
雇用保険被保険者資格取得届 | 資格取得した翌月の10日まで | ||
二元適用事業所 | 保険関係成立書 | 所轄の労働基準監督署 (参照:全国労働基準監督署の所在案内) | 保険関係が成立した翌日から10日以内 |
概算保険料申告書 | 所轄の労働基準監督署 | 保険関係が成立した翌日から50日以内 | |
雇用保険適用事業所設置届 | 所轄の公共職業安定所 | 設置の翌日から10日以内 | |
雇用保険被保険者資格取得届 | 資格取得した翌月の10日まで |
健康保険と厚生年金保険の加入手続
提出書類 | 提出先 | 提出期限 |
健康保険・厚生年金保険所 新規適用届 | 管轄(被保険者が住んでいる地域)の年金事務所 (参考:全国の相談・手続き窓口) | 加入義務の事実発生から5日以内 |
健康保険・厚生年金 被保険者資格取得届 | ||
健康保険 被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届) |
※いずれも日本年金機構のホームページよりダウンロードが可能
まとめ
いかがでしたでしょうか。
学生アルバイトでも「労災保険」への加入が必須で、「(狭義の意味での)社会保険」については加入が必要になる場合があります。
これらの保険の加入は”義務”であるため、未加入の場合については罰則が発生してしまいます。「知らなかった…」で後悔することがないように、今回の内容がお役に立てれば幸いです。
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