採用プロモーションとは? 中小企業が取り組むべき理由と成功事例

オウンドメディアやSNSなど、さまざまな媒体を通じて企業が自ら情報発信を行う「採用プロモーション」。近年は取り組む企業が増加しており、耳にしたことがある採用担当者は多いかもしれません。

一方で「やり方が分からない」「やってみたいけれど自信がない」などの理由から、採用プロモーションをまだ始められていない企業も多いのではないでしょうか。
採用プロモーションは、効果を実感するまでに時間がかかることも少なくないため、まずは取り組みを始めることがとても重要です。

そこで今回は、採用プロモーションの基本や取り組むメリット、手法(活用するツール)から成功事例まで詳しく紹介します。
採用プロモーションへの理解を深め、取り組みの第一歩を踏み出しましょう。

採用プロモーションとは

採用プロモーションとは、企業が採用活動のために行う情報発信のことで、「採用広報」とも呼ばれます。その目的は目先の応募獲得だけではなく、選考中の歩留まり率の向上や、入社後の定着を図ることです。

近年は求職者との接点(求職者が自社に関する情報に触れる媒体やタイミング)が多様化しています。そのため採用効果を高めるには、戦略的な情報発信が必要。

例えば、学生の就職活動においては、以下のように企業認知から内定までの各ステップで適切な情報発信が求められます。

選考から内定まで適切な情報発信のフロー図

画像出典:@人事

上記のフローからも分かるとおり、企業はオウンドメディアやSNS、イベントなどさまざまな手法を通じて求職者が求める情報を発信する必要があります。

採用プロモーションが必要とされる理由

なぜ、採用プロモーションによる戦略的な情報発信が必要なのでしょうか? その理由についても触れておきましょう。

人材獲得が厳しい「売り手市場」

国内の採用市場は、求職者よりも人材を獲得したい企業のほうが多い「売り手市場」が続いています。

単に求人募集を行うだけでは、人材確保が難しい…。それが採用を行う企業の現状です。

そのため、自社に興味を持ってもらうための情報発信が必要となっています。

しかし、人材が必要なときにのみ行う一時的な情報発信は、効果があまり期待できません。

とくに人口減少によって今度も人手不足が続く国内採用においては、長期的な視点で人材確保に取り組むことが求められるでしょう。

情報収集ツールの多様化

SNSの利用が当たり前の時代、求職者が情報収集に活用するツールも多様化が進んでいます。
求人媒体からの情報収集が当たり前だった時代とは異なり、日常的に使用するSNSであらゆる情報の取得が可能。さらにそのSNSにもさまざまな種類があります。

一方、企業にとってはツールの多様化によって、求職者と接点をもつ機会が増加しました。その機会を活かすために、ツールごとに情報の受け手に合わせた情報発信を行う採用プロモーションが必要とされています。

求職者がリアルな情報を求めている

求人広告では決まったフォーマットの中で、企業の魅力を訴求することに力を入れるため、企業にとって都合の良い情報が優先的に公開される傾向があります。

ところが近年は、求職者が企業の実情を知る手段が豊富にあり、企業の口コミ・評判サイトやOB・OG訪問のためのマッチングサイト・アプリなどを活用する求職者も少なくありません。

つまり、求人広告で繕われた情報よりもリアルな情報を求めているのです。

採用プロモーションのメリット

採用プロモーションには、求人媒体を利用した採用活動とは異なるメリットがあります。

潜在層への認知拡大

売り手市場では、すでに転職活動を始めている顕在層だけでなく、「いつかは転職しよう」「良い会社があれば転職しよう」と考える潜在層に対するアプローチが重要です。

中小企業の場合は、求職者が就職・転職活動の際に初めて企業名を知るケースが少なくありません。
“名前を聞いたことがある企業”と“まったく知らない企業”では、求人に対する興味や応募のしやすさが異なります。

採用プロモーションで認知を広げておくことは、“知っている企業”として求職者の目に留まる可能性を高めることにもつながるのです。

ミスマッチの回避

採用プロモーションで発信する情報を求職者(および転職潜在層)が受け取る際、企業と求職者の関係は、採用を“する側”と“される側”ではありません。

そのため求職者はフラットな視点で企業と仕事について理解を深めることが可能。興味があれば、自らさらに情報収集をすることにもつながるでしょう。

どのような会社で、どのような人が働いているのか。職場の雰囲気や働き方はどうなのか。求職者がその会社で働くことを具体的にイメージできれば、社風や仕事が自分に合っているかどうかの判断もしやすくなります。

言い換えると、自社と親和性の高い人からの応募を獲得しやすくなり、ミスマッチ(選考中の離脱や入社後の早期退職)の回避につなげることができるのです。

採用コストの削減

採用プロモーションの取り組みを重ねることで、社内にノウハウを蓄積することができます。
そのノウハウを活かして直接応募を獲得できるようになれば、求人媒体や人材紹介会社に頼った採用活動から脱却することが可能。
広告費や紹介料など採用コストの削減につなげることができます。

採用プロモーションで活用するツール

採用プロモーションのための情報発信にはいくつかの方法があり、ほとんどの企業が複数のツールを活用しています。

ここでは、代表的な3つのツールを紹介します。

オウンドメディア

オウンドメディアとは、自社で運用するメディアのことです。採用プロモーションにおいては、採用ホームページやブログなどを指します。
自社運営のため、発信する内容や伝え方の自由度が高い点がオウンドメディアの特長です。

反面、立ち上げや運営には手間とコストがかかります。

中途半端な運営では期待するほどの効果を得られない可能性が高いため、社内の状況を考慮したうえで、取り組むかどうかを判断する必要があるでしょう。

ペイドメディア(有料広告への出稿)

メディアの有料広告を用いる、認知拡大のための手法です。テレビやラジオなどのマスメディアは、幅広い層に対するアプローチが可能。Webメディアでは、広告の配信対象者を絞ることができます。

いずれも認知効果は一時的ですが、その後メディアで取り上げられたり、SNSなどで広がったりすれば、長期的な効果が期待できるでしょう。

ただし、費用が高額となる場合もあるため、目的と予算(費用対効果)のバランスをみたうえで検討することをおすすめします。

SNS(無料/有料)

無料で利用できるSNSは、多くの採用担当者にとって取り組みを始めやすいツールといえます。

採用プロモーションでは、「X(旧Twitter)」「Instagram」「YouTube」「TikTok」「Facebook」などが活用されているほか、「Wantedly」や「LinkedIn」などのビジネスSNSの活用も有効です。

採用プロモーションでSNSを利用する際は、採用ターゲットの属性を踏まえ、最適なSNSを選定します。

また各SNSに用意されている有料広告プランを活用することで、より効果的なアプローチが可能です。

採用プロモーションの成功事例

採用を成功させている企業は、どのように採用プロモーションに取り組んでいるのでしょうか。自社にも活用できそうな取り組みがあれば、ぜひ参考にしてください。

フリー株式会社

クラウド会計ソフト 「freee」で知られるフリー株式会社は、SaaS型クラウドサービスの開発・運営を手がける企業です。
フリー株式会社ではオウンドメディアを活用した採用広報を実施しています。

フリー株式会社 freee採用サイト(採用ブログ)

画像出典:フリー株式会社 freee採用サイト(採用ブログ)

インタビュー記事が掲載されている採用ブログは、エンジニア向けの内容が中心です。自社サービスや技術的な話題、キャリアに関すること。

また社内におけるエンジニアの役割や位置づけ(重要性)なども分かります。
実際に働くエンジニアの人柄や入社エピソード、彼らが語る仕事の面白さは、この会社で働く魅力の訴求につながっています。

またnoteの企業アカウントnote proでも発信をしており、「あえ共freee」と名づけられた公式アカウントでは多数の記事が公開されています。

フリー株式会社 あえ共freee

画像出典:フリー株式会社 あえ共freee

“freeeの価値基準「あえて、共有する」に沿って、自分たちが何をしているかを発信しています!”の説明のとおり、さまざまなポジションのスタッフが日々の業務や出来事を公開。

採用に特化した内容ではありませんが、企業理念や従業員が共有する価値観、日々の業務についても知ることができ、会社に対する理解を深められる内容です。

手島精管株式会社

手島精管株式会社は、医療用ステンレスチューブメーカーとして世界トップクラスの生産量を誇る企業です。
求職者からの知名度の向上やイメージアップを図るために、2023年から採用広報に取り組み始めました。

手島精管株式会社 採用サイト

画像出典:手島精管株式会社 採用サイト

自社製品が世界から必要とされている理由や、その製品を創り上げる繊細な技術を伝えるコンテンツを作成。
さらにコンテンツへの流入(見る人)を集める手法としてFacebook、Instagram、LINEの有料広告を採用しています。

さらにInstagramでは、仕事内容や働く環境、独自制度、従業員インタビューなどを投稿。内容に合わせてスライド画像や動画を活用しており、求職者が手軽に情報収集できるよう工夫されています。

手島精管株式会社 Instagram

画像出典:手島精管株式会社 Instagram

これらの取り組みにより、同社は年間30名の採用に成功しました。企業規模に関わらず、採用広報が有効であることを示す事例です。

株式会社 八百鮮

大阪市福島区の野田新橋筋商店街内に本店を置く、生鮮食品専門店「八百鮮」。大阪と名古屋を中心に店舗を構える同社は、2019年に企業のミッション・ビジョン・バリューを刷新し、企業ブランディングの構築に取り組み始めました。

株式会社 八百鮮 企業ホームページ

画像出典:株式会社 八百鮮 企業ホームページ

同時期から採用広報にも注力。TwitterからWantedlyへの流入導線を確立することで、求人広告にかかるコスト削減を実現しています。

さらにWantedlyでは、ストーリー(ブログ)のPV数が日本一になったことも(29,962社中1位/2019年11月)。会社が注目を集めることは、既存従業員のモチベーションアップや定着にも貢献しています。

売上・従業員数ともに成長を続ける同社は、2024年に採用サイトのリニューアルを実施しました。

株式会社 八百鮮 採用サイト

画像出典:株式会社 八百鮮 採用サイト

採用動画やコンテンツの充実を図り、Wantedlyのストーリーも定期的に更新を続けています。継続して採用広報に取り組むことの重要性を示す事例といえます。

まとめ

国内の採用市場は、求職者が企業を選ぶ売り手市場です。
人材確保に危機感を持つ企業の多くが採用プロモーションに取り組んでおり、会社の規模や業種を問わず、その数は増加しています。

採用プロモーションは、人事採用担当者だけの取り組みではありません。採用広報の成功事例からも分かるとおり、社内の協力が不可欠です。

そのため、まずはできることから取り組みを始め、採用活動を全社的な取り組みとして進められる環境づくりを進めていきましょう。

協力の輪を広げることができれば、採用はもちろん、人材定着や採用コストの削減など、さまざまなメリットを得られるはずです。

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この記事を書いた人
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馬嶋 亜衣子(samusillee)

採用・キャリア関連、医療分野を中心に執筆を行うフリーランスライター。 各種メディアの取材ライティングやSEOライティング、採用HPのライティングなどに携わっています。

監修者
監修者
辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を作り出した。
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