保育士の人手不足の原因と要因とは?|保育士採用のための対策を解説

保育士の採用対策

待機児童問題が大きく取り上げられるようになってから、保育士の人手不足が注目を集めるようになりました。
2015年には「保育士等確保対策検討会」が実施され、現在までに保育士不足を解消するためのさまざまな取り組みが政府主導で行われています。

しかし、業界の方であればご存じの通り、保育士の人手不足は依然として解消されておりません。人手不足が厳しい状況ではありますが、保育所などの施設においても保育士を確保するためにできることはあるはずです。
この記事では、保育士不足の要因と保育士が離職する原因を踏まえ、人手不足の対策について解説します。

保育士における人手不足の現状

保育士における人手不足の現状を2つのデータから見てみましょう。

保育士の有効求人倍率

まずは、保育士の有効求人倍率を確認します。
厚生労働省(保育士の有効求人倍率の推移)
画像出典:厚生労働省『保育士の有効求人倍率の推移』

2019年10月時点における保育士の有効求人倍率(赤色の折れ線グラフ)は、3.05倍。これは、全職種(ピンク色の折れ線グラフ)の2倍近い数値です。
また各年の有効求人倍率のピークは右肩上がりに上昇しており、保育士の採用が年々厳しさを増していること(=人手不足)が分かります。

【POINT】
有効求人倍率とは、求職者一人に対する求人数のこと。一人あたりの求人数が増えれば有効求人倍率は高くなり、企業にとって採用が難しい状態であることを意味します。

保育士の離職率

次は保育士の離職率に目を向けてみたいと思います。

  従事者数 採用者数 退職者数 採用率 離職率
全体 403,990人 52,405人 35,988人 13.0% 8.9%
保育所等・保育所型事業所内保育事業所の常勤保育士数 334,387人 41,751人 29,854人
幼保連携型認定こども園の常勤保育教諭数(保育士資格保有者) 69,603人 10,654人 6,134人

参照:厚生労働省 e-Stat 平成30年社会福祉施設等調査 個別表 より作成

厚生労働省の調査結果によると、2018年の1年間における保育士の離職率は8.9%です。2013年時点での離職率は10.3%(※1)だったため、改善されていることが確認できました。
2018年の年初常用労働者の全体離職率、平均14.6%(※2)と比較して考えた場合には低い数値と見ることもできます。

しかし、保育士の有効求人倍率の高さを踏まえると、決して安心できる数値ではありません。たった一人の離職によって、人手不足による負のスパイラルに陥ってしまう保育所が少なくないからです。離職率は低下していても人手不足の解消には至っていないのが現状といえます。
(※1)出典:厚生労働省『保育士等に関する関係資料 保育所保育士の採用者と離職者』
(※2)出典:厚生労働省『平成30年雇用動向調査結果の概況(1)平成30年の入職と離職』

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保育士が人手不足になる4つの要因

続いて、保育士の人手不足を引き起こしている要因について考えてみましょう。

保育需要の増加

1つ目の要因は、社会における保育需要の増加です。保育需要の増加した背景には、女性の就業率の上昇が挙げられます。

男女共同参画局(男女共同参画白書 平成29年版 就業率の推移)

画像出典:男女共同参画局『男女共同参画白書 平成29年版 就業率の推移』

女性の就業率(オレンジ色)は、上昇を続けています。

次に保育所等の利用率の推移を示したグラフ(青色と緑色)を見てみましょう。
厚生労働省(保育所等関連状況取りまとめ[保育所等待機児童数及び保育所等利用率の推移])

画像出典:厚生労働省『保育所等関連状況取りまとめ[保育所等待機児童数及び保育所等利用率の推移]』

保育所等の利用率も上昇していることが分かります。女性の就業率の上昇に比例して保育需要が高まり続け、それが保育士不足の要因になっているということです。

三世代世帯の減少

女性の就業率が上昇しても、両親などに預けられる環境があれば施設での保育需要が伸び続けることはないでしょう。しかし、2016年までの30年間で三世代世帯は大幅に減少しています(以下、⑤黄色のグラフ)。
政府統計(国民生活基礎調査(平成28年)の結果からグラフでみる世帯の状況)

画像出典:政府統計『国民生活基礎調査(平成28年)の結果からグラフでみる世帯の状況』

育児の負担を分担できない家庭が増えたことも保育需要の増加を加速させる原因であり、保育士不足における2つ目の要因となっています。

都市部への人口集中

保育士の人手不足は、人口が集中する都市部において顕著です。そのため都市部では保育施設の新設や定員数の拡大が行われており、政府が待機児童問題の解消に乗り出した2015年以降、保育施設の数は1.26倍(※3)に増加しています。

一方で担い手となる保育士の数は、2015年からの増加率が1.06倍(※4)。現状では、施設の増加に保育士数が追いついていません。これが3つ目の要因です。
保育需要に対する施設面での供給体制は整いつつあるものの、保育士を施設間で奪い合う状況が続いています。

(※3)厚生労働省『保育所等関連状況取りまとめ(平成31年4月1日)』保育所等数の推移より算出
(※4)社会福祉施設等調査(厚生労働省)平成27年平成30年の常勤換算従事者(保育士)数を比較

保育士のなり手がいない

保育士資格を保有する人は増加していますが、保育士として従事していない人が多いことは、保育士不足における重要な課題です。
2015年の調査では、資格取得者の半数近くが、保育所に就職していませんでした(左の円グラフ)。
厚生労働省(保育人材確保のための『魅力ある職場づくり』に向けて)

画像出典:厚生労働省『保育人材確保のための「魅力ある職場づくり」に向けて』

また保育士勤務経験者のうち、「保育士としての就業を希望しない」方の5割以上は、5年未満での早期退職者です(右の円グラフ)。若手保育士が流出している状況が浮き彫りになっていますね。
保育需要が高まる一方で、保育士として働く人々が定着しないことが4つ目の要因として、人手不足を助長させていることが分かります。

早期離職が起こる原因について、以下の記事でも解説しています。
早期離職はなぜ起こる?社員を定着させる3つの取り組みと対策

保育士が仕事を辞める原因

保育士の人手不足は、人材の流出によっても引き起こされています。人手不足への対策を考えるうえで、保育士が仕事を辞める原因にも知っておきましょう。

給与・労働環境への不満

厚生労働省職業安定局が実施した保育士への意識調査によると、「保育士としての就業を希望しない理由」としてもっとも多いのは、賃金に対する不満です。

厚生労働省(保育人材確保のための『魅力ある職場づくり』に向けて【保育士としての就業を希望しない理由】)

画像出典:厚生労働省『保育人材確保のための『魅力ある職場づくり』に向けて【保育士としての就業を希望しない理由】』

賃金に加えて、休日・休暇の少なさ(取得しづらさ)も保育士不足の課題です。働く職場の環境面に対する不満が離職につながっていることが伺えます。

責任の重さ

先ほどと同じ調査では多くの保育士が「責任の重さや事故への不安」を、就業継続を希望しない理由として挙げています。

責任の重さ画像出典:厚生労働省『保育人材確保のための『魅力ある職場づくり』に向けて【保育士としての就業を希望しない理由】』

子供の命を預かる保育士が担う責任の重さは、言うまでもありません。精神的な負担の大きい仕事でありながら賃金面の不満もあり、報酬と責任が釣り合わないと感じている保育士が多いということでしょう。

就業条件

再就職の際に保育士を選ばない理由については、「就業時間が希望に合わない」が最も多くを占めました。
就業条件画像出典:厚生労働省『保育人材確保のための『魅力ある職場づくり』に向けて【保育士としての就業を希望しない理由】』

この回答から推測できるのは、仕事と家庭との両立の難しさです。家庭を持ちつつ働くうえで、柔軟な勤務形態を求める保育士が多いことが分かります。

保育士の人手不足対策

保育士の人手不足を解消するには、どのような取り組みが有効なのでしょうか。ここでは、優先順位の高い3つの対策を紹介します。

待遇・労働環境の改善

人手不足の解消には、離職の主要原因といえる処遇と労働環境の改善が不可欠です。その有効性は、以下のアンケート結果からも読み取ることができます。
就業を希望しない場合の保育士への就業希望

画像出典:厚生労働省『保育人材確保のための『魅力ある職場づくり』に向けて【就業を希望しない理由が解消した場合の保育士への就業希望】』

本来は仕事を続けたいはずの保育士が、処遇や労働環境の問題から離職していることが読み取れます。給与や休日日数(労働時間)の改善、働きやすい制度の整備は、人手不足を解消するうえで欠かすことのできない対策です。

学生や潜在保育士に向けた採用PR

保育士の人手不足から連想されるネガティブなイメージを払拭するために、保育士の資格を取得した学生や、資格をもちながら他の仕事に就いている潜在保育士に向けたPRも大切です。

例えば、職場の様子を間近で見られる見学会や、先輩保育士への質問会などのイベントの開催。働きやすい環境づくりへの取り組みに関するSNSでの発信。求人票での訴求に留まらない多角的なPRが有効でしょう。

採用手法(求人媒体)の見直し

職場環境の改善と同時に目を向けたい取り組みが、採用の効率化です。保育士の確保が難しい状況の中、一人あたりの採用コストは高騰していますよね。採用コストを削減できれば、浮いた予算を待遇改善や環境整備に配分することが可能になります。待遇改善を図る余力のない保育所では、採用手法の見直しから取り組んでみてください。

ここで採用手法の一つ、Indeedを活用して採用コストの削減に成功したとある保育士クライアント様の事例を紹介します。
Indeedの有料広告を活用したことで、求人の表示回数を上げながらも1応募にかける費用を抑えることに成功し、結果的に採用コストの削減につなげられました。

詳しくは以下の記事で解説しています。
Indeed有料広告で応募単価を大幅に下げることに成功【保育士業の求人成功事例】

まとめ

保育士を確保するための施策が政府主導で行われていることもあり、待機児童が社会問題化した当初と比べて処遇改善は進んでいます。しかし、依然として人手不足の解消には至っていません。保育士が仕事を続けたいと思えるような職場を作る努力は、すべての保育所で求められています。

保育士の採用の効率化には、『採用係長』がおすすめです。

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採用Webマラボ編集部

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監修者
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辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を作り出した。
Indeedはもちろん、インターネット広告やDSP広告を組み合わせた効率的な集客や、Google Analytics等の解析ツールを利用した効果分析、サイト改善を強みとしている。

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