会社の人事・労務担当者や個人事業主が取り扱う「雇用保険」。
毎年保険料率が変わったりと、担当者にとっては押さえておくべきポイントが多く大変です。
そこで当記事では、令和6年の雇用保険料率について最新の情報をお届けします。
保険料計算にあたっての注意点も紹介するため、ぜひ当記事を日頃の業務にお役立てください。
目次
雇用保険とは?
雇用保険とは、労働者の失業や休業にあたってその生活を保障するための制度です。
労働者と会社は、双方が一定の保険料を支払い続けることで給付制度を利用できます。
代表例として、離職した人が再就職するまでの期間に受給できる「失業給付金」があります。これは一定期間雇用保険に加入している労働者しか受け取れません。
なお、雇用保険と労災保険を合わせて「労働保険」と言います。
雇用保険の対象となる条件
雇用保険の対象となるのは、下記の条件をいずれも満たすすべての労働者です。
【雇用保険の加入条件】
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 雇用期間の見込みが31日以上(短期契約を繰り返す場合も対象)
- 昼間学生ではない
なお、昼間学生であっても下記に該当する場合は加入対象となります。
- 卒業見込証明書を有していて、卒業後も同一の企業で勤務予定
- 休学中(事実を証明する書類が必要)
- 事業主の指示や承認のもと、大学院などに在籍中
- 通信教育/夜間/定時制の学校の学生
雇用保険料率とは?
ここからは「雇用保険料率」に焦点をあてて解説します。
「雇用保険料率とは?」「どんな賃金が対象なのか?」「令和6年最新の保険料率は何%なのか?」それぞれ見ていきましょう。
そもそも雇用保険料って?
雇用保険料は、雇用保険の給付を受けるために毎月支払う掛金のことです。
保険料を徴収する目的は、雇用保険制度を運営するために必要な財源を確保するためです。
労働者と事業主が共同で負担し、国が運営する失業給付や雇用安定事業、能力開発事業などの財源となります。
雇用保険料の対象
雇用保険料の対象となるのは賃金の総支給額(控除前)です。
具体的には下記の賃金が算定対象となります。
【対象となる賃金】
- 基本給
- 賞与
- 通勤手当(定期券などの現物支給含む)
- 扶養手当や家族手当など従業員以外を対象とする手当
- 技能手当など個々のスキルや資格、作業内容に応じて支給される手当
- 在宅勤務手当
- 調整手当
- 地域手当
- 住宅手当
- 奨励手当
- 休業手当
- 宿直、日直手当
- 社会保険料・雇用保険料
- 昇給差額
- 前払い退職金
- 社会保険適用促進手当
- その他(労働協約や就業規則などにより支給条件が明確にされたもの)
【対象とならない賃金】
- 役員報酬
- 結婚祝金、死亡弔慰金、災害見舞金、年功慰労金、退職金など
- 出張旅費や宿泊費などの実費弁償
- 工具手当や寝具手当
- 休業補償費
- 傷病手当金
- 解雇予告手当
- 財産形成貯蓄のために事業主が負担する奨励金
- 会社が全額負担する生命保険の掛金
- 住宅の貸与を受ける利益
※詳細について確認したい方はこちら
雇用保険料の対象となる賃金|厚生労働省
令和6年度の雇用保険料率は令和5年度と同率
令和6年度(2024年度)の雇用保険料率は、令和5年度(2023年度)と同率です。
具体的な料率は以下の通りです。
負担者 | 一般の事業 | 農林水産・清酒製造の事業 | 建設の事業 |
労働者負担 | 6/1000 | 7/1000 | 7/1000 |
事業主負担 | 9.5/1000 | 10.5/1000 | 11.5/1000 |
合計 | 15.5/1000 | 17.5/1000 | 18.5/1000 |
事業の種類によって保険料率は異なる
上記の表からも分かるように、雇用保険料率は事業の種類によって異なります。
これは、産業ごとの雇用状況や失業リスクの違いを反映したものです。
例えば「農林水産・清酒製造の事業」は、季節によって売上に差が生じやすく、雇用や経営が不安定になりやすいためです。
「建設の事業」は建設期間を終えると収入が落ちる可能性があることに加え、雇用保険料を財源とした助成金が多いことがあげられます。
雇用保険料の計算方法は?
雇用保険料の計算方法は以下の公式で求めることができます。
雇用保険料 = 賃金総額 × 雇用保険料率 |
雇用保険料は「年度更新」で精算
雇用保険料の支払いは毎年1回、その年度に従業員に支払う賃金を概算して前払いします。
これを「年度更新」といい、前年度分の精算も併せて行います。
年度更新は例年6月1日~7月10日が提出時期です。年に1度だけなので、このときに忘れずに提出する必要があります。
雇用保険料を算出するときの3つの注意点
雇用保険料の取り扱いを間違えると、従業員への謝罪や納付額の訂正など、本来はかからなかった負担が生じます。
そこで、雇用保険料の算出にあたって注意すべきポイントを3つ紹介します。
端数が出た場合の処理は正しく
従業員の賃金から雇用保険料を徴収する際、従業員分の端数が50銭以下であれば切り捨て、50銭1厘以上であれば切り上げとなります。
従業員が事業主に現金で支払う場合は、従業員分の端数が50銭未満であれば切り捨て、50銭以上であれば切り上げです。
【例】
従業員負担分=245,828円×6/1000=1474.968=1475円 |
端数処理を誤ると、従業員の給与計算や会社の会計処理に影響を及ぼす可能性があります。正確な処理を心がけましょう。
賞与からも控除する
雇用保険料は月々の給与だけでなく、賞与からも控除する必要があります。これは事業主が見落としがちな点です。
賞与に対する雇用保険料の計算方法は、通常の月給と同じです。賞与支給額に雇用保険料率を乗じて算出します。
賞与に対する雇用保険料=賞与支給額 × 雇用保険料率 |
65歳以上の従業員も加入
65歳以上の従業員も、通常の要件を満たす場合は雇用保険への加入が必須です。
以前は65歳以上の従業員は対象外とされていましたが、平成29年1月1日より適用対象となっています。
併せて、「高年齢求職者給付金」や「育児休業給付金」「介護休業給付金」といった雇用保険関連の給付金も対象です。
まとめ
雇用保険は「従業員からの徴収は毎月」「支払いは年に1度年度更新のときのみ」と複雑な要素もありますが、計算方法はシンプルですし、一度仕組みを覚えれば取り扱いは難しくありません。
とはいえ、保険料の計算を間違えると従業員の支給賃金にも影響が出たりと、トラブルのもとになります。ぜひ当記事の内容を日頃の正確な事務にお役立てください。
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