目次
採用ブランディングとは
採用ブランディングとは、採用において自社を「ブランド化」する戦略のことです。
具体的には、魅力的に感じる会社になるように、自社のビジョンや特徴、働きやすさや入社するメリットなど求職者に向けて情報を発信し、戦略的にブランドを構築していく採用手法です。
そもそも、「ブランディング」とは?
意図したブランド・イメージを消費者・顧客が抱くように、戦略的にアプローチしていくこと、またはそれらのアプローチを設計すること。
※ブランディングとは単にブランドの認知を図るだけではなく、製品の購買に繋がる消費者・顧客のニーズと連結する適切なブランドイメージを消費者・顧客に抱いてもらうことである。
※採用ブランディングと採用マーケティングの違いについて知りたい方はこちら
採用マーケティングとは?メリットや導入のステップ、成功事例をご紹介!
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採用ブランディングの目的
採用ブランディングの目的は「自社が求めている人材を確保すること」です。
採用ブランディングを行った結果、採用できる数も増えますが、主たる目的は企業の利益を最大化するために自社が求める人材を増やすことです。
採用ブランディングが注目される背景
下記のような時代背景から、近年、採用ブランディングの必要性が高まっています。
- 終身雇用制の崩壊と転職の活発化
- 少子高齢化の加速による労働力の減少
- グローバル化による人材の流動化
- ミレニアル世代やZ世代を中心とした仕事に対する価値観や企業選びの基準の変化
- SNSや求人媒体の増加による情報過多
少子高齢化により市場全体で労働力が減少していることは周知の事実ですが、これにより採用競争が激化しています。
自社について対外的に発信して「自社=○○」というイメージ付けを行い、認知度向上やイメージアップにつなげることが、採用競争で優位に立つキーとなってくるのです。
「SNSや求人媒体の増加による情報過多」についても補足すると、SNSなどが普及してどの企業も自由な情報発信ができるようになった分、求職者にとっては情報が多すぎて「あの企業も気になるけど、この企業も良いな……」と処理しきれていない側面があります。
自社の明確な魅力を打ち出すことが求職者の判断を助けることにつながり、結果的に応募や内定承諾の可能性が高まるのです。
採用ブランディングのメリット
採用コスト削減につながる
採用ブランディングに成功すれば、応募が増え、理想の人材を採用できる機会が増えるでしょう。
会社のブランディング効果が上がれば、自社ですでに活躍している社員が人材の紹介をするリファラル採用ができる可能性もあります。
採用ブランディングを行うことで、求人媒体以外での応募者が増え、その結果採用コスト削減につながるでしょう。
ミスマッチ減少による離職率の低下
求めている人材が「会社に適合する人材」もしくは「単純にスキル面を求めている人材」で大きく変わります。
「会社に適合して求めているスキルを持つ人材」が増えれば、徐々に離職率が低下していくことが予想できます。
ミスマッチ減少による選考辞退の低下
採用ブランディングが成功すれば、「会社にとって必要な人材」と「求職者にとって求める条件」が合致する選考が増えます。マッチ度が高まれば、選考後の辞退率も減少するでしょう。
応募数の増加
採用ブランディングを行う場合、企業が求める人材に向け、自社の強みや求職者が興味を持つ内容を発信していきます。
採用ブランディングが成功すれば、多くの求職者が自社のことを知り、自社に興味を持ってくれるため、求人への応募が増えることが予想できます。
また、各種採用媒体での応募率も上がり、応募もより多く集めることが可能です。
採用ブランディングのデメリット
短期的に成果がでない
採用ブランディングは一朝一夕で短期的に効果が出せるものではありません。
転職活動者やまだ転職を考えていない人に対して、多くの人の企業イメージを変えたり、人材募集していることを知ってもらうことからスタートします。
ただ、企業に対する印象を良くするのは簡単ではありません。人によって印象が良くなるポイントはさまざまですし、興味の対象も違うので、それらを踏まえた上での戦略が必要です。
また、口コミなどで悪いイメージがあれば、その悪いイメージを払拭するために改善する必要があります。
長期的に自社のことを広く知ってもらえるよう、情報発信を続けることが重要です。
コストがかかる
採用ブランディングを行うと、長期的な戦略なので、予算面や人員面に負担がかかります。
ただこれは戦略的にブランディングを行っていく段階の話です。
採用ブランディングに成功した場合、応募数が増える可能性があるので、ある程度人員を割りあてることも検討すべきでしょう。
そのため、採用ブランディングにコストがかかる可能性を視野に入れる必要があるでしょう。
人事の負担が増える
採用ブランディングは、人事部が運用することになるかと思います。
そうなると、採用ブランディングを進めていく上で、かならず下記のポイントを分析していく必要があります。
- どの部署にどんな人が足りないか?
- どの部署でどんな問題があるか?
- 自社の強みは何か?
- 競合他社との違いは何か?
- 自社の改善すべきところは何か?
媒体で求人を出す時以上に、深く分析していく必要があります。
そして、分析の結果から施策を打ち、企画・運営などに手を取られ、応募が増えれば対応に追われることになります。
マーケティング調査ができていなければ成果が出にくい
採用ブランディングは、無計画で行ってもほとんど成果は出ません。
自社・他社・ターゲットに対して、密に調査をすることで狙うポイントが定まり、成果に繋がりやすくなります。
例えば、マーケティングでよく行われる分析に「3C分析」があります。
3C分析とは、「Company(自社)」、「Customer(顧客)」、「Competitor(競合)」の3つを分析して理解するために行います。
採用ブランディング視点に置き換えると、3Cは「Company(自社)」「Customer(求職者)」、「Competitor(採用競合企業)」指します。
採用ブランディングの進め方
採用ブランディングは大きく下記の流れで進めます。
- 自社についての分析と競合他社との比較
- 自社が求める人材を明確にする
- 採用コンセプトを決定する
- 発信内容を企画する
- 効果測定の改善策の検討
各ステップで実施することについて具体的に解説します。
自社についての分析と競合他社との比較
「採用に力を入れている同業種の企業」や「同じような求職者を求めている企業」といった採用競合他社と全く同じことをしても自社の良さを伝えることができません。
そのため、3C分析で自社と他社を深く分析し、違いを明らかにした上で、自社の強みを知ってもらえるような情報を配信していく必要があります。
他社にはない自社の強みを発信できなければ、優秀な企業でも、採用ブランディングを成功させることは難しいでしょう。
自社が求める人材を明確にする
採用ブランディングを行う最大の理由は、「自社に必要な人材を集めて利益を増やすこと」に他なりません。
そのため、自社にどんな人材が必要なのかを分析して、採用ブランディングを行う必要があります。
この求める人物像のことを「ペルソナ」といいます。
逆にどんな人材が欲しいのかを明確にせずに採用ブランディングした場合、運よく応募が増えたとしても、全く求めていない人材からの応募やミスマッチを増やすことになります。
採用コンセプトを決定する
採用ターゲットが明確になったら、それを踏まえて採用コンセプトを設定しましょう。
採用コンセプトをひとことで表すと、「採用活動の指針」です。
採用ブランディング戦略の立案も求職者に向けた情報発信も、さらには面接時の対応まで、あらゆる採用活動の場面でこの「採用コンセプト」が軸になります。
採用コンセプトを決める際は、まず「3C分析」などで自社の価値を整理し、それをもとにメッセージやスローガンを考える流れがおすすめです。
発信内容を企画する
続いて発信内容の企画ですが、ここで重要なのがペルソナに刺さる内容にすることです。
事業への想いや既存社員のインタビュー、社風など、発信内容は自社ごとに違って問題ありませんが、ペルソナの立場から「共感してもらうには」という視点で企画を立ててください。
炎上リスクについてもここで対策をうっておきましょう。
特にSNSの拡散力は大きな武器となりますが、内容によっては企業のマイナスイメージにつながります。発信内容を社内でチェックしてから投稿するなど、リスクを予防するための体制を整えることが重要です。
効果測定と改善策の検討
採用ブランディングは実施して終わりではなく、定期的に効果測定をして改善策に落とし込みます。
効果測定としては大きく下記2つの取り組みを行ってみてください。
- 採用サイトや求人広告の数値分析
- 応募者や新入社員に対する調査
数値分析については第一ステップとして「アクセス数」や「求人への滞在時間」に注目する必要があります。
アクセス数が多い求人のノウハウを他求人にも活かすなど、分析結果を踏まえた改善策を講じます。
しかし、いくらアクセス数を増やしても、応募につながらなければブランディングの意味がなくなってしまいます。実際に応募した人、あるいは入社後の社員に口頭やアンケートで調査をして、「どんな点が応募につながったのか」を把握することが重要です。
採用ブランディングに取り組む際のポイント
従業員の満足度を上げる
従業員が会社の口コミをつくります。また社外で悪い話が出るか良い話が出るか、この従業員の満足度次第でしょう。
採用ブランディングで怖いのは口コミや評判ですが、今働いている人がその口コミや評判を作るので、外にばかり目を向けず、従業員の満足度を上げる必要があります。
求職者に知ってもらう媒体を持つ
採用ブランディングを行う上で、ターゲットと接点を持てる場所を確保することは非常に大切です。
そして接点となるのは、下記が想定されます。
- SNS
- オウンドメディア
- 転職フェア
- 求人媒体
- コーポレートサイト
- 会社説明会
また、ブランディングをする上で、より多くの求職者の目につかなければなりません。
そこで、採用ブランディングで最適な接点となる媒体は「SNS」や「オウンドメディア」でしょう。
オウンドメディアの代わりに自社採用サイトでもよいですが、戦略を組むことが必要不可欠です。
長期的な目線でコツコツ取り組む
採用ブランディングで行うことは、3C分析、SNS運用、オウンドメディアの運用などを行っていくため、時間がかかります。
3C分析に関しては、競合が変われば分析をもう一度行う必要があり、SNS運用はSNSのアカウントを開設しどれだけのフォロワーを集められるよう運用できるかが重要となります。
さらに、オウンドメディアは単純にターゲットとする求職者からのアクセスを集めなければいけませんが、オウンドメディアの運用も、興味を持ってくれる情報を多く入れた記事を100~1,000記事ほど書いていく必要があり、短くても1年以上の期間を要します。
長期的に時間がかかる対策にコストをかけて短期的に成果が出ることを求めると、逆に空回りして運用が失敗に終わるでしょう。
そのため、1年~3年などの長期間で費用対効果を計測していくことが望ましいです。
全社的な取り組みとして行う
採用ブランディングは「人事部門だけ」ではなく、他部門に協力をあおぎながら「全社的に」取り組むことが重要です。
人事部門から見た会社の魅力と、実際に現場で働く社員が感じる魅力は異なるためです。また、会社一体となって取り組むことで、その一体感を対外的に伝えることはもちろん、既存社員が自社の良さを再確認するきっかけにもなります。
採用ブランディングの発信手段
自社の採用サイト、オウンドメディア
「オウンドメディア」とは、企業が保有する採用サイトなど自社で運営するメディアのことです。
近年は求人サイトなどでその企業に興味を持った求職者が、さらなる情報を集めるために自社採用サイトを訪問するケースが多く、応募への後押しとなります。
【メリット】
- すでにHPを所有している場合などは低コストではじめられる
- 他媒体で自社に興味を持った求職者の閲覧が多いのでマッチ度を高めやすい
【デメリット】
- コンテンツ制作や運用に時間・コストがかかる
- オーガニック検索から呼び込むにはSEOなどの対策が必要
SNS
X(旧:Twitter)やFacebook、InstagramなどのSNSで情報発信をすることが一般的になってきました。
例えばInstagramで普段の働く様子を投稿することで、「こういう良い雰囲気の中で働きたいな」と思う求職者を引きつけたり、マッチ度の高い人材との出会いを促進することが期待できます。
【メリット】
- 発信の自由度が高いので温度感をもって情報を届けられる
- 採用コストを削減できる
【デメリット】
- 効果が出るまで時間がかかる
- 継続的な情報発信が必要なので担当者の負担が大きい
会社説明会やイベント
就職フェアといったイベントに参加して求職者と直接つながる方法です。
認知度が低い企業でも求職者に知ってもらえる可能性があります。
【メリット】
- 対面でコミュニケーションをとるため熱量が伝わりやすい
- 認知度が低い零細企業・中小企業でもアピールしやすい
【デメリット】
- 出展にあたって数十万~数百万円のコストが発生する
- 準備や当日の対応など業務面での負担が大きい
採用ブランディングの成功事例
株式会社メルカリ
2019年当時、創業5年で社員数が1,000名を超えるほど成長を見せていたメルカリ。その大きな要因が、人事部門だけでなく全社的に採用に携わったことです。
「People&Culture」という部署内に「People Branding」というチームがあり、ミッションとして『「メルカリグループではたらく人」を発信し、社内外に「メルカリらしさ」を認知してもらう』を掲げ、オンライン・オフライン、社内・社外問わず、多様な情報発信を行っています。
その核となっているのがオウンドメディア「mercan」です。基本ポリシーは「HRが主導すること」「記事は毎日更新すること」「点在する情報を集約すること」「PVは共有し、追わないこと」「社員へのシェアは強要しないこと」の5つ。記事をはじめYouTube投稿やライブ配信などを通じて、社内の「はたらく人」の多様な姿を伝えています。
【出典】
「読者は何を知りたいのか」を考え抜く。メルカリ採用ブランディングのメソッド|d’s JOURNAL
エイベックス株式会社
確度の高い母集団を形成することを重視して、採用したい人物像を「モテる人」「うごく人」「つよい人」と言語化。
「モテる人」とは、一緒に仕事をしていて気持ちがいい、というように求心力のある人。「うごく人」は変化が大きい業界で働く中で、その変化をポジティブに捉えながら自分自身も柔軟に変わり主体的に行動できる人です。
そして3つ目の「つよい人」は、業界自体に華やかなイメージがある中、地道で泥臭い仕事が多い実態とのギャップを理解し、芯を持って貫き通す強さがある人をあらわしています。
【出典】
エイベックス株式会社 / 人気エンタメ企業の採用戦略とは|RECCOO採用お役立ちブログ
まとめ
採用ブランディングに成功すれば、人材不足という現実から脱却できる可能性は十分にあります。
しかし、マーケティング調査をせずに競合もやってるから真似してみよう!といった理由で対策を行っても意味がなく、無駄にコストと人的リソースを使用するでしょう。
採用ブランディングを考えているのであれば、まずはマーケティング調査を行い、少なくとも1~2年先を見据えた対策を行うことを推奨します。
「応募が集まらない……」「自社に合う人材の応募がない……」
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