日本版DBSで求人票はどこを直す?学習塾・スポーツ教室の採用実務

日本版DBS(こども性暴力防止法)で学習塾やスポーツ教室の採用がどう変わるかを解説する記事のアイキャッチ画像

こども性暴力防止法(日本版DBS)が、2026年12月25日に施行されます。学習塾やスポーツ教室、習い事の教室を運営していて、この制度で自社の採用が何か変わるのかを気にしている方に向けて整理しました。

学習塾やスポーツ教室は、学校や認可保育所のように犯罪事実確認を義務づけられる立場ではありません。国の認定を受けるかどうかを自分で選べる、任意の認定制です。ただし当てはまるかどうかは事業ごとの5つの要件で決まり、教える人が3人以上いない教室は、民間教育事業としては認定を申請できません。まず自社が当てはまるかを最初の章で判定してください。取るかどうかは費用より運用で決まります(後半で扱います)。

認定を受けると決めた場合でも、求人票で手を入れるのは特記事項の欄だけで、業務内容や賃金といった項目はこれまでどおりで足ります。こども家庭庁は募集要項に特定性犯罪の前科がないことなどを明示する対応を適当であると書いており、法律上の義務ではありません。認定申請の受付は施行日の2026年12月25日からですが、求人票の書き換えは今日から着手できます。まだ認定を受けていない事業者向けの記載例まで用意されているからです。

なお日本版DBSという呼び方は報道などで使われている通称で、法律の名前ではありません。正式には学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律(令和6年法律第69号)といい、所管するこども家庭庁はこども性暴力防止法と呼んでいます。施行日は法律本体ではなく政令で決まりました(令和7年政令第439号・2025年12月24日公布)。

学習塾やスポーツ教室は任意の認定制です

この法律は、こどもと接する仕事に就く人について性犯罪の前科がないかを確認する仕組みを作るものです。ただし、確認が義務になる事業者と、任意で認定を受けられる事業者に分かれています。

義務になるのは、学校(大学を除く)、認可保育所、認定こども園、児童館、児童養護施設などを設置する者です。児童発達支援や放課後等デイサービスといった指定を受けた障害児通所支援事業、小規模保育や事業所内保育などの家庭的保育事業等を行う者も、この義務対象に含まれます。

一方、学習塾やスポーツクラブ、ダンススクール、フリースクールなどは民間教育保育等事業者として整理され、国の認定を申請できる立場になります。放課後児童クラブ(学童保育)や認可外保育施設も同じ枠組みです。申請するかどうかは事業者が選べます。

ただし、認定を受けないという選択には一つ意味があります。犯罪事実確認は、法律上、義務対象の学校設置者等(法第4条第1項)と、認定を受けた民間教育保育等事業者(法第26条第1項)が行うものとして定められています。認定を取らなければ、この制度の枠組みには入りません。認定を取らないこと自体に罰則や不利益な処分は定められていません。

対象になるかどうかは5つの要件で決まります

判定はすべて事業の側の条件で、従業員数や利用するこどもの人数による線引きは法令のどこにもありません。規模で区切る唯一の条件が、下の5つ目にある3人以上という人数要件です。こども家庭庁の施行ガイドラインは、法律上明確な定義のない事業として学習塾・スポーツクラブ・ダンススクール・フリースクールなどを例に挙げたうえで、この5要件を満たすものだけを民間教育事業としています。

  • こどもに対して技芸または知識の教授を行うこと
  • 標準的な修業期間が6か月以上であること
  • 対面による指導を行うこと
  • 事業者が用意する場所(こどもの自宅を除く)で指導を行うこと
  • 技芸または知識の教授を行う者が3人以上いること
民間教育事業の対象判定フローチャート。技芸・知識の教授、修業期間6か月以上、対面指導、事業者が用意する場所、教授を行う者が3人以上の5要件を順に判定する図

民間教育事業に当たるかどうかの判定。5つの要件をすべて満たす場合に、認定を申請できます

教える人が3人以上、の数え方

雇用の形は問いません。派遣で来ている人やボランティアであっても、実態として教える仕事に従事していれば人数に含めます。反対に、教える仕事に携わっていない事務スタッフは、職員として在籍していても数に入りません。

常時3人が教室にいる必要もありません。3人が交代で、1人または2人ずつ教えている運営でも要件を満たします。複数の教室で一つの事業を回している場合も、すべての教室に3人以上を配置する必要はなく、事業全体で判断します。

教える人という言い方も、講師や指導員という職種名の人に限られません。こども家庭庁は、教授する内容は問わないとしたうえで、技芸または知識の教授を行う者は講師や指導員に限られないと説明しています。

教える人が2人以下の教室は、この要件を満たさないため民間教育事業には当たりません。ここで注意したいのは、それが義務を免れたという意味ではないことです。制度上は、民間教育事業としての認定を受けられない立場になります(各種学校や放課後児童健全育成事業など、ほかの号に当たる場合は別の区分で認定対象になり得ます)。

月謝制の教室は修業期間6か月以上に当たるのか

判定するのは、受講しているこども一人ひとりの契約期間ではなく、事業をどう実施しているかです。具体的には次の3つをすべて満たすものを指します。

  • 6か月以上の期間にわたって事業を実施していること
  • その期間に複数回、技芸または知識の教授を行っていること(間隔は問わない)
  • その期間の教授の機会に、同じこどもが複数回参加できること

こども家庭庁は、月1回や週2回など定期的に事業を実施していて、同じこどもが継続して教わることを想定している場合を、要件を満たす例に挙げています。反対に、7月に1回2時間、12月に1回2時間だけ、それぞれ独立した別のプログラムとして実施するようなものは当たりません。

通年で回している月謝制の教室は、この3点を満たすと読めます。ただしガイドラインもQ&Aも月謝制という言葉自体は使っていないため、公式に月謝制を名指しした見解があるわけではありません。判定するときは、契約の形ではなく事業の実施のされ方を見てください。

オンライン専業や家庭教師の線引き

対面による指導が一切想定されず、オンラインだけで授業を行う事業は対象になりません。ただし、オンラインを基本にしつつ、こどもの要望などに応じて対面で指導することも想定される事業であれば、ほかの要件を満たす限り対象になり得ます。

場所の要件でいう事業者が用意する場所とは、保護者ではなく事業者が指定した場所を指し、こどもの自宅は除かれます。事業者のオフィスのほか、従事者の自宅、カフェ、公民館の個室、公園なども含まれます。家庭教師の事業も、こどもの自宅以外の場所でも教える場合があれば、この場所の要件を満たします。

義務と認定を取り違えやすいところ

公立か民間かでは分かれません。私立学校法人が設置する学校は義務対象ですし、公設公営の放課後児童クラブは認定対象です。同じ建物の中で区分が割れることもあります。

事業・施設 区分
学校(大学を除く)・認定こども園・認可保育所・児童館 義務
児童発達支援・放課後等デイサービス・認可の小規模保育など 義務
学習塾・スポーツクラブ・ダンススクール・フリースクール 認定(任意)
放課後児童クラブ(公設公営を含む) 認定(任意)
認可外保育施設・一時預かり事業・病児保育事業 認定(任意)

とくに間違えやすいのが放課後等デイサービスです。指定を受けた障害児通所支援事業は義務対象ですが、うちは民間だから任意の認定制だと受け取られていることがあります。反対に、児童館は義務対象でも、その児童館で運営している放課後児童クラブは認定対象です。児童館や保育所の設置者が同じ施設でクラブを一体的に運営している場合は、事業運営と人事管理を一元的に行っているなど一定の要件を満たせば、クラブの従事者も義務対象事業の従事者として扱えます(要件の全文は施行ガイドラインとQ&Aでご確認ください)。

認可の有無だけで機械的に分かれるわけでもありません。認可外の保育施設でも、地方裁量型の認定こども園の認定を受けていれば義務側になります。分かれ目は認可かどうかではなく、法律が事業をどう列挙しているかです。

誰の分を確認するのか

施行前にあらかじめ定めておくべき事項の筆頭に挙げられているのが、各施設・事業における対象業務従事者の範囲です。

講師と指導員は職種全体が対象です

学習塾・そろばん教室・外国語会話教室では指導員と講師、地域スポーツクラブやフィットネスクラブでは講師・指導者・指導員が、いずれも職種全体で対象とされています(音楽・書道・生花茶道などの教授業でも同様に、講師や師範といった職種が挙げられています)。

なお、この表に事業所の管理者は載っていませんが、法律の条文は民間教育事業について事業所の管理者を明文で対象にしています。ガイドラインの表はあくまで例示という断りが付いているので、塾長や教室長が対象外だと読まないでください。

事務や送迎、清掃は一律に対象外ではありません

こちらは職種の一部が対象になり得るという分類です。受付業務員、清掃員、警備員(スポーツ系や音楽系ではさらに運営スタッフ)が挙げられています。ただし、法律の条文が民間教育事業について挙げているのは事業所の管理者と技芸・知識の教授を行う者の2つで、この条文とガイドラインの表の関係を説明した記述は、施行ガイドラインとQ&Aの中には見当たりません。両方を踏まえたうえで、自社の業務実態で判断することになります。

誰を対象にするかは、事業者自身が業務の実態を見て、支配性・継続性・閉鎖性という3つの要件で判断します。こども家庭庁は、3要件を満たす従事者を確実に対象とするよう留意を求めています。

支配性 業務の中でこどもと接する機会が継続的にあれば、原則として認められます。指導やコミュニケーションを通じて優越的な立場に立つ機会が想定される場合だけでなく、日々顔を合わせて会話を不定期に行うだけでも、大人とこどもという関係上自然に生じ得ます。

継続性 日常的・定期的な業務のほか、不定期でも反復して継続することが見込まれる場合を含み、短期か長期かを問いません。年に1回のイベント講師や、緊急時に突発的に接するだけといった一時的な接触は、継続性がないと判断し得ます。

閉鎖性 ほかの職員や保護者が同席せず、第三者の目に触れない状況でこどもと接する機会が生じ得る場合に認められます。従事者1人に対してこどもが複数の場合も含みます(人数が2人以上だから一対一ではない、という整理はQ&Aで明確に否定されています)。SNSや学習ツールを通じたオンラインの接触も含まれます(録画配信のようにやりとりが生じないものは除きます)。

職種ごとの当てはめは、ガイドラインが具体的に例示しています。

職種 対象外になる場合 対象になる場合
事務職員 電話対応や書類整理などに業務が限られていて、こどもとの接触がほとんど想定されない 事務作業が中心でも、例外的な場面でこどもと接触することが業務として想定される
送迎バスの運転手 ほかの職員が同乗することが前提で、第三者の同席がない状況が想定されない 職員が同席しないバスで、会話などを通じてこどもと接することが想定される
受付業務員 往来の多い場所で来客対応や電話対応などの事務作業のみを行う ほかの職員が同席しない状況で、会話などを通じてこどもに接することが想定される
清掃員 こどもがいない時間帯に清掃を行っていて、接触がほとんど想定されない 教育や保育を行っている時間に、日常的に職員が同席しない状況で接する機会がある
警備員 往来の多い校門や施設外の警備のみ 職員の目が届かないところも含めて施設内を日常的に巡回し、こどもに接することが想定される

境目の判断で参考になる一次の記述が2つあります。忘れ物への対応などでこどもと一対一になる状況について、こども家庭庁は、業務として通常こどもと一対一となる可能性があるものであれば閉鎖性の要件は満たすと回答しています。送迎バスについては、特に最後に降ろすこどもとは一対一になる点が、閉鎖性の理由として挙げられています。

アルバイトやスポットワーク、ボランティアも対象です

従事する期間による例外は設けられていません。1日や数日といった短期の有期契約で働く人も、ボランティアのスタッフも、スポットワークで単発だけ従事する人も、教育保育等従事者に当たる限り対象です。

さらに、職種全体が対象になるとされた職種(学習塾なら指導員と講師)については、スポットワークで短期間だけ働いているといった個々の働き方にかかわらず対象で、事業者の判断で外すことはできません。こども家庭庁がQ&Aで明記しています。

反対に、模擬試験の問題配付や時間管理といった運営管理にアルバイトとして携わる人は、第三者が同席しない状況でこどもと接することが想定されない場合、支配性と閉鎖性を満たさず対象外になります。

都度短い期間で契約している人やボランティアについては、一定の期間を定めて同じ事業者で対象業務に従事する可能性がある旨の書面を別に取り交わしておくと、その期間中は犯罪事実確認の記録を保有でき、次に働いてもらうときに確認済みの状態で従事させられます。人の入れ替わりが多い教室ほど、この扱いを知っているかどうかで手間が変わります。

派遣や業務委託は、受け入れた側が確認します

確認の主体は、指揮命令や契約の形ではなく、こどもと接する場を用意している側で決まります。派遣で人を受け入れている場合、犯罪事実確認を行うのは派遣元ではなく派遣先です。請負で働く人についても、請負事業主ではなく発注者である事業者が行います。従業員を使わず業務委託で個人として役務を提供している人についても、委託した側の事業者が行います。

業務委託の場合、委託者には指揮命令権がありません。そのためガイドラインは、業務委託契約に犯罪事実確認(戸籍等の提出を含む)と研修受講に応じなければならない旨を定め、その違反を契約解除の事由とすることを定めたうえで、本人に直接説明する必要があるとしています。派遣や請負で受け入れる場合も、契約に確認と研修を行った者を従事させなければならない旨を規定し、応じない場合は派遣労働者の変更などを要請することが挙げられています。

確認は事業者ごとに行うもので、ほかの事業者が確認済みでも、その結果を共有して使うことはできません。学校や保育所に施設を借りて別事業として教室を開いている場合は、その事業が認定を受けているならサービスを実施する事業者の側が確認し、学校や保育所の事業として実施するなら学校設置者等が確認します。個人契約の講師を使っている教室では、契約書の見直しが先に来ます。

日本版DBSで採用のスケジュールはどこが変わるか

いちばん大きく変わるのは、国への犯罪事実確認を選考の途中では始められない点です。

内定前に確認することはできません

本人の承諾があったとしても、内定前には実施できません。ガイドラインが使っている言葉は内定後ではなく、対象業務に従事することが確定した段階です。その入口として、内定や異動内示などを受けてからと示されていますが、主語は事業者側の決定ではなく、従事者が対象業務に従事する旨の意思表示を受けたときとされています。

つまり、国への照会結果を使って選考の途中で応募者をふるいにかけることはできません。特定性犯罪の前科の有無を本人に確認する誓約書などの手続きは、これとは別に選考の過程で行います。ここで確認するのは前科一般ではなく、法律が定める特定性犯罪の前科があるかどうかに限られます。Q&Aは、内定前(履歴書提出時)の誓約書等で明示的に確認することを示しています。

確認書が届くまで2週間から1か月かかります

日本国籍を有する場合の標準処理期間が2週間から1か月、日本国籍を有さない場合は1か月から2か月です。

採用のスケジュールを引くときに効いてくるのは、法律が定めている期限が交付を申請する期限ではなく、確認書を受け取って確認を終える期限だという点です。標準処理期間の最長(日本国籍なら1か月、日本国籍を有さない場合は2か月)より前に申請したのに交付されなかったときは、後述するいとま特例のやむを得ない事情に当たるものとして扱われます。

本人の側にも手続きがあります。確認書が事業者に交付される前に、まず本人へ内容が通知されます(通知を出すのはこども家庭庁で、法務大臣ではありません)。本人は通知を受けた日から2週間以内に内容の訂正を求めることができ、この2週間が経過するまで事業者には確認書が交付されません。訂正しない決定が出た場合でも、本人が交付申請の取下げを求められるよう7日間の考慮期間が置かれてから交付されます。

本人が内定を辞退するなどして対象業務に従事しないことになった場合には、中止要請という手続きもあります。本人がこども家庭庁に中止要請を行うと、事業者への確認書の交付が保留されます。事業者が結果を見ないまま採用が終わる経路が、制度上用意されているということです。なお、犯罪事実確認を行ったあとに内定辞退があった場合は、その記録を廃棄・消去することが義務づけられており、違反には罰則があります。

雇用契約の始期が来ていても、こどもと接していない座学の研修やオリエンテーションに参加させているだけであれば、対象業務を行わせたことには当たりません。

犯罪事実確認を組み込んだ採用フローの時系列図。選考中は誓約書と履歴書で確認し、従事が確定してから犯罪事実確認を申請、日本国籍で2週間から1か月で確認書が交付され着任に至る流れ

確認を始められるのは、対象業務に従事することが確定してからです。交付までの期間を逆算して採用計画を組みます

職種を限定せずに募集すると、確認を始められません

内定を出せば必ず始められるわけではありません。職種を限定せずに募集していて、内定の時点では対象業務に就くかどうかが決まっていない場合は、対象業務に従事することが定まったときが始期になります。その分だけ着任までの日程が後ろに寄ります。

こども家庭庁は、求人情報を職種単位で開示することを推奨しています。理由の一つとして挙げられているのが、求職者が希望する業務が犯罪事実確認の対象かどうかを事前に判断できることです。募集要項の書き方そのものが、確認を始められる時期に効いてきます。

間に合わないときのいとま特例

急な欠員などのやむを得ない事情で確認を終えるいとまがなく、かつ直ちに従事させなければ事業の運営に著しい支障が生じるときに限って、従事開始日から3か月以内(一定の場合は6か月以内)に確認を行えばよいとする例外があります。

ただし、猶予があるから先に働かせてよいという意味ではありません。ガイドラインは、その人を対象業務そのものから外す必要はないとしたうえで、本来の業務に従事させながら確認が終わるまで必要な措置を講じることを求めています。必要な措置は3つです。

  • 原則としてこどもと一対一にさせないこと
  • 研修を受講させること
  • 管理職による定期的な巡回や声掛けを行うこと

この3つは、いずれも講じる必要があります。研修や巡回を行えば一対一の回避が不要になるわけではない、という注記も付いています。

ここでいう一対一は、こどもの人数だけでは決まりません。従事者1人に対してこどもが複数いても、未就学児や障害のあるこどもなど、異変を認識して周囲の大人に説明できない状況であれば一対一とみなされます。やむを得ず一対一になる場合は、原則として事前に管理職へ時間・場所・対象のこども・必要性を説明して了解を得たうえで、事後に完了報告を行い、外から中が見える場所か防犯カメラのある個室、またはリモートで行うことを検討する必要があります。

これはシフトの組み方そのものへの制約です。通常のシフトに組み入れて長時間一対一にさせる前提の運用は、原則として認められません。いとま特例を使う可能性がある事業者は、その対象になり得ることと講じる措置の内容を、採用の段階であらかじめ本人に伝えておく必要があります。

求人票と誓約書に何を書くか

こども家庭庁は、募集要項・求人票の参考例をWordファイルで公開しています。学校設置者等(保育所)の場合、民間教育保育等事業者の認定後の場合、同じく認定前の場合という3つのパターンが用意されています。

直すのは特記事項の欄だけです

参考例の求人票は13項目の様式で、①業務内容、②契約期間、③試用期間、④就業場所、⑤就業時間、⑥休憩時間、⑦休日、⑧時間外労働、⑨賃金、⑩加入保険、⑪受動喫煙防止措置、⑫募集者の氏名又は名称、⑬特記事項という並びです。

このうち、こども性暴力防止法に関する記載はすべて⑬特記事項の欄にまとめられています。①から⑫までは、これまでの求人票と同じで構いません。制度対応と聞くと求人票を一から作り直す話に見えますが、実際に手を入れるのは末尾の1欄です。

認定を受けたあとの書き方

認定を受けた民間教育保育等事業者向けの記載例は次のとおりです(参考例は認可外保育事業を題材にしています)。

・当社は、認可外保育事業について、学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律(令和6年法律第69号。以下「こども性暴力防止法」といいます。)に基づく認定を受けた事業者です。

・本業務へ従事するに当たっては、こども性暴力防止法に基づき、特定性犯罪の前科の有無を確認するための犯罪事実確認が必要となります。

・特定性犯罪の前科がある場合(特定性犯罪事実該当者の場合)は、こども性暴力防止法に基づき、本業務に従事させないこと等の措置を講じる必要があるため、当社の採用条件の一つとして、特定性犯罪の前科がないことを求めることとしています。

・このため、予め、採用選考過程において、誓約書や履歴書等により、特定性犯罪の前科の有無を確認いたします。

※「特定性犯罪」、「特定性犯罪事実該当者」の内容は別紙参照条文をご参照ください。

こども家庭庁「募集要項・求人票参考例」より(2026年7月29日取得)

1文目に入っている認可外保育事業は、法律が定める事業の類型名です。学習塾やスポーツ教室はこれが民間教育事業に当たるので、「当社は、民間教育事業について、(略)に基づく認定を受けた事業者です。」となります。置き換えるのはこの類型名だけで、2文目以降は参考例のままで構いません。

読み方で一つ押さえておきたいのは、前科がないことを求める理由の書き方です。参考例は、法律が応募資格として定めているという書き方をしていません。前科がある人を対象業務に従事させない措置を講じる必要があるため、事業者が自ら採用条件の一つとして設定している、という組み立てになっています。

認定前でも今日から書けます

これから認定を申請する予定の事業者向けにも、記載例が用意されています。認定後の例と違うのは冒頭の2文だけで、認定申請を行う予定ですと書き、続く文を当社が認定を受けた場合、という条件付きで始めます。

参考例は、認定前の例を用意した理由も説明しています。認定を受けたあとに重要な経歴の詐称を理由とする雇用管理上の措置を行う場面のうち、認定前に内定を出した人や、認定の時点ですでに従事している人に対する措置との関係では、認定前の採用選考の段階で先に対応しておく必要があるためです。

施行後に使うときの注意

参考例には、施行後にこのひな型を使う際は「令和8年12月25日までに施行予定の」という文言を外してください、という指示が付いています。9月に作った求人票をそのまま施行日の12月25日以降も使い続けると、この一文だけが古くなります。

内定通知書と就業規則にも定めておきます

求人票への明示は、単独で効くものとしては書かれていません。参考例の冒頭解説は、雇用管理上の措置の有効性をめぐるトラブルを防ぐために、次の3つをそろえて行うことが適当だとしています。

  • 内定通知書等に内定取消事由として、就業規則に試用期間中の解約事由や懲戒事由等として、それぞれ重要な経歴の詐称などを定めて周知しておくこと
  • 採用募集要項の採用条件に、特定性犯罪の前科がないことなどを明示すること
  • 誓約書や履歴書等を通して、特定性犯罪の前科の有無などを書面等で明示的に確認すること

この3つを入れるのは、犯罪事実確認の対象になる職種の募集に限ります。自社の判定で対象業務に当たらないとした職種の求人票には、特記事項も誓約書も広げません。こども家庭庁が求人情報を職種単位で開示することを推奨しているのは、この線引きを求職者にも分かる形にするためです。

3つをそろえるかどうかは義務ではなく、適当であるという表現が使われています。ただし、そろえておくかどうかで、あとから採れる手段が変わります。

確認の結果、特定性犯罪事実に該当することが分かった場合、ガイドラインは原則としてその人を対象業務に従事させないこととし、新規採用なら内定取消しなど、現職者なら対象業務以外への配置転換などを例に挙げています。そのうえで、内定取消しができるかどうかを条件付きで論じています。

採用選考で特定性犯罪の前科の有無を明示的に確認していたのに虚偽の申告や黙秘があり、内定後の犯罪事実確認で該当者と判明した場合は、内定取消事由の重要な経歴の詐称に該当すると考えられるとされています。反対に、選考で明示的に確認していなかった場合は、内定後の確認で該当者と分かっても、その事実だけを理由に直ちに内定を取り消すことは合理性や相当性が認められるとは考えにくいとされ、まず対象業務以外の職での採用可能性を検討し、それが難しい場合に内定取消しを検討するという順序が示されています。判断の枠組みとして、採用内定当時に知ることができず知ることも期待できない事実であって、取消しが客観的に合理的で社会通念上相当と是認できるものに限られるという最高裁判例(大日本印刷事件・最高裁第二小法廷 昭和54年7月20日判決)が引かれています。

終わり方は解雇や内定取消しだけではありません。ガイドラインは、本人の意思で内定辞退や退職といった選択がなされることも想定されると書いています。また、内定辞退が犯罪事実確認の結果によるものかはほかの会社には分からないため、内定辞退の選択はさまざまな事情によるもので、直ちに犯罪歴の有無と結びつけられるものではないという注意喚起も、独立した節として置かれています。

内定通知書の参考例では、内定取消事由として重要な経歴の詐称だけでなく、犯罪事実確認に必要な手続等に対応しないときも明示することが適当だとされています。前科の有無だけでなく、手続きに応じない場合も想定した書き方です。

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応募者に伝えておくこと

事業者が求職者や現職者にあらかじめ伝えておくべき事項は、一覧の形で示されています。制度の趣旨と目的、各施設・事業における対象業務従事者の範囲、個人情報の管理が徹底されること、採用内定後などに犯罪事実確認の対象となること、本人から国へ戸籍等を提出する必要があることなどが並びます。書面等で確認・伝達等することとしたうえで、求職者に対しては採用面接などを通して伝えることが望ましいとされています。

戸籍等は、従事者本人がシステムを通じて直接こども家庭庁に提出するため、その内容が事業者に知られることはありません。提出したかどうかの状況は、事業者もシステム上で把握できます。取得にかかる費用は本人の負担なので、募集の段階で説明しておくと行き違いが減ります。

教育職員や保育士については、この法律にもとづく犯罪事実確認とは別に、内定前に教員データベースや保育士データベースを活用することが必要です。確認する中身も違い、犯罪事実確認は性犯罪の前科、データベースはこどもへの性暴力等による行政処分の履歴です。

募集要項に書ける内容には、求人広告全体のルールもかかります。年齢や性別の表記など、求人票で避けるべき表現は求人広告のNGワードにまとめています。

認定を取るか、取らないか

費用は1事業あたり3万円です

書面申請になるのは回線の故障や災害などの場合だけで、そのときだけ3万1,500円です。申請はこども家庭庁のシステムを使う電子申請が原則なので、通常は3万円で収まります。

手数料がかかるのは認定の申請だけで、犯罪事実確認そのものに手数料はかかりません。認定に更新の仕組みもないため、更新の費用も発生しません。1事業あたりなので、同じ事業を複数の教室で運営していれば1申請で済みますが、逆に同一の事業について一部の教室だけ認定を受けるという形にはできません。

認定を受けると、求人広告や求人票にマークを付けられます

制服やパンフレット、名刺と同じ扱いで、求人広告とハローワークの求人票にも付けられます。使えるのは認定事業者マーク(学校や認可保育所が使う法定事業者マークとあわせて、通称こまもろうマークと呼ばれます)です。ガイドラインはマークを付けられる広告等を6つの類型に分けて示しており、そのうちの一つが認定等事業に関する労働者等の募集の用に供する広告又は文書で、具体例として求人広告とハローワークの求人票が挙げられています。Q&Aも、付けられるものとして制服、パンフレット、募集案内、メディア広告、ウェブサイト、名刺、受付、看板とあわせて求人広告を列挙しています。

表示は任意です。ガイドラインは広く表示することが望ましいと書いているだけで、付けない選択も認められています。

制約もあります。マークを付けられるのは認定等事業に関する募集広告や文書に限られ、認定を受けていない事業の求人票には付けられません。義務対象の事業と認定対象の事業を一体で運営していても、認定を取っていない事業の広告には付けられません。このほか、撤去や回収ができないノベルティのような配布物には付けられず、認定が取り消されたときは速やかに撤去・回収します。

認定を受けていない段階でマークや紛らわしい表示を使うことは、法律で禁じられています。違反した場合は1年以下の拘禁刑もしくは50万円以下の罰金、またはその併科の対象です。従業員が違反した場合には、行為者本人が罰せられるほか法人にも罰金刑が科される両罰規定が置かれています。

マークは2種類あります。認定を受けた民間事業者が使うのが水色の認定事業者マーク、学校や認可保育所などの義務対象事業者が使うのがピンク色の法定事業者マークです。認定事業者マークのデザインは告示で定められ、施行日が来ただけでは使えず、認定を受けたあとから使用できます。画像は認定後にシステムからダウンロードする仕組みです。

ただし、求人票のどの欄にマークを置くかについて、公式の指定はありません。ガイドラインの表は付けられる対象物を列挙しているだけで、掲載位置には触れていませんし、公式の求人票の参考例にもマークの欄はありません(参考例では、特記事項の欄に認定を受けた事業者である旨を文章で書く形式です)。求人媒体の側がマーク画像の掲載に対応しているかどうかも、こども家庭庁の資料の範囲外です。掲載を考えるときは、使っている媒体の仕様をそれぞれ確認してください。

認定を受けると、事業者名や所在地、代表者名、事業の概要と種別、事業所の名称と所在地、従事者の業務の概要、認定年月日などがこども家庭庁のウェブサイトで公表されます。認定が取り消された場合も、その旨が公表されます。

認定を取らない場合に何ができなくなるか

マークは使えず、認定事業者の一覧にも載りません。罰則や不利益な処分は定められていないので、選ばないこと自体は自由です。

一方で、認定を取ると継続的な義務が生じます。児童対象性暴力等対処規程を守ること、帳簿を備え付けて犯罪事実確認の実施状況を記載・保存すること、実施状況と記録の管理状況を定期的に報告することが求められ、必要な限度で行われる報告徴収や立入検査にも応じる必要があります。拒否や妨害は50万円以下の罰金の対象です。

判断の分かれ目は、費用よりも運用の側にあります。認定を取れば、帳簿の備付けと実施状況の定期報告、立入検査への対応が続きます。逆に取らなければ、この制度の枠組みには入りません。講師の入れ替わりが多く、確認の記録を使い回せることが効く教室ほど認定の実益は大きく、講師が固定で数年変わらない教室なら、急いで決める必要はありません。

施行前にできること、施行後にしかできないこと

認定申請の受付が始まるのは2026年12月25日からで、それより前に申請することはできません。認定を受けるまでには審査などで1か月から2か月程度かかります(記載に不備があって訂正する期間は含みません)。

一方で、施行前に着手しておくべきことがあります。認定の基準には、対象業務の従事者に研修を受講させていることが含まれており、認定時点ですでに従事している人への研修は申請の前に済ませておく必要があります。研修は座学と演習を組み合わせ、性暴力が生じる要因やこどもの権利を含む基礎的な事項、不適切な行為の範囲、疑いを早期に把握するための措置、相談・報告等を踏まえた対応、被害を受けたこどもの保護と支援など8つの項目を含むものでなければなりません。認定の基準はこのほか、犯罪事実確認を適切に実施するための体制、性暴力等が行われるおそれがないかを早期に把握するための措置、こどもが容易に相談できるようにするための措置、児童対象性暴力等対処規程の作成、確認記録等の適正な管理があり、あわせて6つです。

認定を受けた場合、認定の時点ですでに対象業務に従事している人と、その前日までに内定や内示を受けていて認定後に従事する人(認定時現職者)については、認定等の日から1年を経過する日までに犯罪事実確認を終える必要があります。義務対象の事業者が施行日から3年(施行ガイドラインは令和11年12月24日までと記載)とされているのとは、起算点も期間も別です。新たに従事する人は、業務の従事開始日までに確認を終えます。そして一度確認すれば終わりではなく、犯罪事実確認書に記載された確認日(法務大臣が確認を行った日)の翌日から5年を経過する日が属する年度の末日を超えて従事させる場合は、その年度の初日から末日までの間にあらためて確認します。

日本版DBSの対応として今日から手をつけられること

まず、自社が民間教育事業の5つの要件に当てはまるかを判定します。次に、誰の分を確認するのかを決めます。講師と指導員だけでなく、事務や受付、送迎、清掃の担当者について支配性・継続性・閉鎖性の3要件で見ていく作業です。そのうえで、求人票の特記事項を直します。認定前の記載例が公開されているので、認定を待たずに始められます。

求人票の特記事項を直したら、その求人をどこに出すかも合わせて決められます。費用をかけずに募集を出す方法は無料求人広告のおすすめを見るで比較しています。地域を絞って講師やスタッフを探す場合はジモティーへの掲載方法を見るもあわせてご覧ください。

制度の細部はこども家庭庁の施行ガイドラインとQ&Aで随時更新されています。この記事の内容は2026年7月29日時点で公開されている資料にもとづいています。最終的な判断は、こども家庭庁の最新の資料でご確認ください。

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この記事を書いた人
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辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。 通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験し、Indeed・求人ボックス・スタンバイなどの求人検索エンジンを活用した採用支援を強みとする。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を持つ。 求人検索エンジンを活用した採用集客や、Google Analytics等の解析ツールを用いた効果分析・サイト改善を強みとしている。

監修者
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辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験し、Indeed・求人ボックス・スタンバイなどの求人検索エンジンを活用した採用支援を強みとする。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を持つ。
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