ものづくり補助金とは|申請方法や対象者、注意点を解説

中小企業の生産性向上につながる補助金の代表格に「ものづくり補助金」があります。
「ものづくり」という言葉があるものの、業種関係なく新たな設備導入などに活用できるこの補助金。国が運営する補助金の中でも特に人気が高いです。

「具体的にどんな補助金なのかを知りたい」
「申請までのスケジュールが知りたい」
実際にこのように考えている方は多いのではないでしょうか。

今回はものづくり補助金の概要や企業へのメリット、申請が採用されるポイントなどを紹介します。新たなチャレンジのために資金を求めている企業は、ぜひ当記事をお役立てください。

「ものづくり補助金」とは?

ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資などを支援する制度です。
正式名称を「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といい、税金をもとに実施されています。

■ものづくり補助金の目的

ものづくり補助金の主な目的は以下の通りです。
日本経済の屋台骨である中小企業の競争力強化と持続的発展を目指しています。

  • 中小企業・小規模事業者の生産性向上
  • 新製品・サービスの開発や既存製品の高付加価値化
  • 新たな生産方式の導入や業務プロセスの改善
  • グリーン化の推進

■ものづくり補助金の対象

ものづくり補助金の大まかな対象者は下記のとおりです。

  • 中小企業者(組合関連以外)
  • 中小企業者(組合・法人関連)
  • 小規模企業者・小規模事業者
  • 特定事業者の一部
  • 特定非営利活動法人
  • 社会福祉法人

詳細は業種によって異なるため、後述の「ものづくり補助金の対象事業者」内で解説します。

■ものづくり補助金が導入された背景

ものづくり補助金が設立された背景には、「働き方改革」や「被用者保険の適用拡大」「インボイス導入」といった国の制度変更があります。
これらの制度変更に対応するためには各企業の生産性向上が必須であり、それを国として支援するための補助金が「ものづくり補助金」なのです。

さらに深掘りすると、国がさまざまな制度変更を実施する背景には、下記のような社会的要因があります。

  • 人口減少に伴う労働力不足
  • 国際競争の激化
  • デジタル化・グローバル化の進展
  • 地球温暖化をはじめとした環境問題

ものづくり補助金の3つの申請枠

ものづくり補助金の申請枠は定期的に変更があり、2024年9月現在で最新となる18次締切分では、「省力化(オーダーメイド)枠」「製品・サービス高負荷価値化枠」「グローバル枠」の3つの申請枠に分かれています。
各申請枠の補助金額や追加要件について解説します。

①省力化(オーダーメイド)枠

生産プロセス・サービス提供方法の効率化・高度化による人手不足解消を目的に、デジタル技術を活用した専用設備(オーダーメイド設備)を導入する場合に利用できます。
デジタル技術を活用せずにただ機械装置などを導入するだけだと補助事業の対象にはなりません。

従業員数 補助金額
5人以下 100万~750万円
6~20人 100万~1,500万円
21~50人 100万~3,000万円
51~99人 100万~5,000万円
100人以上 100万~8,000万円
  補助金額1500万円まで 1500万円を超える部分
中小企業 1/2 1/3
小規模企業者、小規模事業者、再生事業者 2/3 1/3

【基本要件に加えた追加要件】

  1. 3~5年の事業計画期間内に補助事業において設備投資前から労働生産性が2倍以上になる事業計画を策定する
  2. 3~5年の事業計画期間内に投資回収可能な事業計画を策定する
  3. 外部SIerを活用する場合、3~5年の事業計画期間内における保守・メンテナンス契約を締結し、SIerは必要な保守・メンテナンス体制を整備する
  4. 本事業に係る資金を金融機関(ファンド含む)から調達予定の場合は、金融機関による事業計画の確認を受け、金融機関による確認書を提出する

②製品・サービス高負荷価値化枠

製品・サービス高負荷価値化枠は「通常類型」と「成長分野進出類型(DX・GX)」に分けられます。

■通常類型
革新的な製品・サービスの開発に取り組むうえで必要な設備・システムの支出を補助する制度です。

従業員数 補助金額
5人以下 100万~750万円
6~20人 100万~1,000万円
21人以上 100万~1,250万円
  補助率
中小企業 1/2
小規模企業者、小規模事業者、再生事業者 2/3
新型コロナ回復加速化特例 2/3

【基本要件に加えた追加要件】

  1. 3~5年の事業計画期間内に新製品・サービスの合計売上高が、企業全体の売上高の10%以上となる事業計画を策定すること
  2. 本事業に係る資金を金融機関(ファンド含む)から調達予定の場合、金融機関による事業計画の確認を受け、金融機関による確認書を提出する

■成長分野進出類型(DX・GX)
DX・GXの分野における革新的な製品・サービスの開発に取り組むうえで必要な設備・システムの支出を補助する制度です。

従業員数 補助金額
5人以下 100万~1,000万円
6~20人 100万~1,500万円
21人以上 100万~2,500万円
  補助率
中小企業 2/3
小規模企業者、小規模事業者、再生事業者 2/3

【基本要件に加えた追加要件】

  1. 3~5年の事業計画期間内に新製品・サービスの合計売上高が、企業全体の売上高の10%以上となる事業計画を策定する
  2. 本事業に係る資金を金融機関(ファンド含む)から調達予定の場合は、金融機関による事業計画の確認を受け、金融機関による確認書を提出する
  3. DXに資する革新的な製品・サービスを開発する

③グローバル枠

海外事業を実施して国内の生産性を高めるために設備・システムを導入する際の投資を支援します。

【補助金額】
100万~3,000万円

  補助率
中小企業 1/2
小規模企業者、小規模事業者、再生事業者 2/3

【基本要件に加えた追加要件】
「海外事業」について要件が細かく設定されているため募集要項でご確認ください。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)|ものづくり・商業・サービス補助金事務局

ものづくり補助金申請のメリット

ものづくり補助金の申請には、中小企業・小規模事業者にとって多くのメリットがあります。ここでは、主要なメリットを詳しく解説します。

①高額な補助金による大規模投資の実現

ものづくり補助金を活用すれば数千万円単位の補助金を受けることができるので、通常では難しい大規模な設備投資や研究開発が可能になります。

例えば、最新の生産設備の導入や、高度な技術開発のための研究施設の整備などが実現できます。大規模投資による競争力強化が期待できるでしょう。

②事業を多角化するチャンス

ものづくり補助金は、新製品開発や新サービス提供のための投資も対象としています。
これにより、既存事業の枠を超えた新規事業への進出や事業の多角化が可能になります。

ここで、事業を多角化するメリットについても整理しておきましょう。

  • リスク分散:複数の事業を持つことで特定の市場の変動リスクを軽減
  • 新たな収益源の確保:新規事業により安定した収益基盤を構築
  • シナジー効果:既存事業と新規事業の間でノウハウや資源を共有し効率的な経営が可能
  • イノベーションの促進:新しい分野に挑戦することで創造性や問題解決能力が向上

ものづくり補助金申請における4つの注意点

ものづくり補助金は中小企業の設備投資を支援する有効な制度ですが、申請には注意すべき点があります。ここでは、4つの重要な注意点について解説します。

①50万円以上の設備投資が必須

ものづくり補助金の申請には、補助事業のための50万円以上(税抜き)の設備投資が必要条件となっています。
単なる消耗品の購入ではなく、企業の生産性向上や革新的な製品開発につながる本格的な設備投資を促進するためです。

【設備投資の対象となるもの】

  • 機械・装置の購入、製作、借用に要する経費
  • 工具・機器(測定工具、検査工具、電子計算機、デジタル複合機など)の購入、製作、借用に要する経費
  • 専用ソフトウェアや情報システムの購入、製作、借用に要する経費

「借用」とはリース・レンタルを指し、交付決定後に契約したことが確認できるもので、補助事業期間中に要する経費が対象です。

②後払いのため資金繰りの工夫が必要

ものづくり補助金は「後払い方式」を採用しています。
事業者は一旦全額を自己負担で支払い、事業完了後に補助金が支払われる仕組みです。

申請企業は、補助金交付までの期間をカバーする資金を確保する必要があります。場合によっては、金融機関と連携して融資を受けることも検討しなければなりません。

③申請から報告までの長期的な事務負担が必要

ものづくり補助金の申請から事業完了後の報告まで、長期にわたる事務作業が発生します。
事業計画書の作成や見積りの依頼・用意など、申請まで1か月~1か月半ほどかかります。加えて、補助事業の実施・完了にあたっても報告が必要です。

この負担を軽視すると、結果的に多くのリソースを割くことになり、補助金の適切な活用や成果の最大化が難しくなる可能性があります。
作業を効率的に進めるためには、社内での役割分担や外部専門家の活用を検討することが重要です。

④事業終了後の成果報告が必要

ものづくり補助金は、単に設備投資を支援するだけでなく、その投資による具体的な成果を求めています。そのため、事業終了後も継続的な報告義務があり、これを怠ると補助金の返還を求められる可能性があります。

具体的には、補助事業終了後5年間にわたって、事業状況の報告が必要です。
この報告書では、補助事業の成果を活用した事業化の状況や、他の事業への波及効果などを記載します。

ものづくり補助金の制度詳細

2024年度の申請スケジュール

18次締切分の申請スケジュールは下記のとおりです。

(出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)|ものづくり・商業・サービス補助金事務局

公募要領の公表から申請締切までは約2か月。これまでも2~4か月で設定されているため、次回以降に応募する際は、余裕を持って2か月程度と理解しておくのが良いでしょう。

申請後は2~3か月の審査期間があり、交付候補者決定後に補助事業実施、確定検査、補助金請求、補助金支払いという流れになります。

ものづくり補助金の対象事業者

ものづくり補助金の対象となる「中小企業者」は、下記の資本金または常勤従業員数を満たす企業です。

業種 資本金 常勤従業員数
製造業、建設業、運輸業、旅行業 3億円 300人
卸売業 1億円 100人
サービス業 5,000万円 100人
小売業 5,000万円 50人
ゴム製品製造業 3億円 900人
ソフトウェア業または情報処理サービス業 3億円 300人
旅館業 5,000万円 200人
その他の業種 3億円 300人

ものづくり補助金の対象経費

ものづくり補助金の対象経費は下記のとおりです。

  • 機械装置・システム構築費
  • 技術導入費
  • 専門家経費
  • 運搬費
  • クラウドサービス利用費
  • 原材料費
  • 外注費
  • 知的財産権等関連経費
  • 海外旅費、通訳・翻訳費、広告宣伝・販売促進費(グローバル枠のうち海外市場開拓(輸出)に関する事業のみ)

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(出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業18次公募要領概要版|ものづくり補助金事務局

対象経費ごとに細かく注意点が定められているので、自分たちが申請する経費について公募要領で確認しておくことがおすすめです。
ものづくり補助金総合サイト|ものづくり補助事業公式ホームページ

ものづくり補助金で達成が必要な成果

ものづくり補助金の申請にあたっては3~5年の事業計画を策定します。
その中で、「基本要件」として次の成果を達成することが必要です。

  • 事業計画期間に給与支給総額を年平均成長率1.5%以上増加
  • 事業計画期間に事業場内最低賃金(補助事業を実施する事業場内で最も低い賃金)を、毎年、地域別最低賃金プラス30円以上の水準とする
  • 事業計画期間に事業者全体の付加価値額を年平均成長率3%以上増加

補助金の申請方法と手続き

ものづくり補助金の申請は、全プロセスを電子によって行います。
準備から補助金請求までの主な流れは下記のとおりです。

  1. 公募要領の確認
  2. GビズIDプライムアカウントの取得
  3. 事業計画書の作成
  4. 必要書類の準備
  5. 電子申請システムでの申請
  6. 審査・採択
  7. 交付申請・交付決定
  8. 事業実施
  9. 実績報告・確定検査
  10. 補助金の請求・支払い

申請前にGビズIDプライムアカウントを取得

上記でも解説したように、ものづくり補助金の申請は電子申請が必須です。
申請にあたっては「GビズIDプライムアカウント」を取得する必要があります。
アカウント取得には2週間程度要するとされているので早めの申請がおすすめです。

申請に必要な書類リスト

申請にあたって必須の書類と、該当する場合に必要な書類を下記にまとめました。

【必須書類】

  • 事業計画書
  • 補助経費に関する誓約書
  • 賃金引上げ計画の誓約書
  • 決算書など
  • 従業員数の確認資料

【該当する場合に必要な書類】

  • 労働者名簿
  • 「再生事業者」であることを証明する書類
  • 大幅な賃上げ計画書
  • 金融機関による確認書
  • 海外事業の準備状況を示す書類
  • 最低賃金要件に関する確認書
  • その他加点に必要な書類

ものづくり補助金で採用されるためのポイント

ものづくり補助金で採択を受けるには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。
ここでは、「事業計画書のポイント」および「審査項目と加点項目」について解説します。

①事業計画書作成のポイント

事業計画書の作成にあたっては下記のポイントを盛り込みましょう。

●本事業の目的と手段
今回の事業において新たな設備などを導入する必要性を明確に記載します。
また、事業実施にあたって想定される課題とその解決策、具体的な目標と達成手段について示します。

●他社との差別化
他社とどのように差別化して競争力を強化するのか、その方法や取組内容、実施体制などを説明します。

●将来の展望
今回の事業が影響をもたらす「ユーザー」「マーケット」「市場規模」などについて、成果の価格的・性能的な優位性・収益性を記載します。
また、事業化見込みについて、目標となる時期・売上規模・量産化時の製品価格などを簡潔に示すことも重要です。

●会社全体の事業計画
会社全体の事業計画について、付加価値額や給与支給総額を根拠をもって提示します。

②審査項目と加点項目

ものづくり補助金の事業計画書が採択されるには「審査項目」を満たしていることが必須です。具体的な項目は年度によって文言が変わることはあるものの、基本的には下記の観点です。

技術について ・製品やサービスの開発が革新的か
・課題解決の方法が明確かつ具体的か
事業化について ・事業化の方法やスケジュールが具体的か
・製品やサービスの市場性はあるか
・企業の収益性・生産性が向上するか
政策について ・地域経済の貢献など国の政策に合致するか

また「加点項目」を意識することも重要です。
こちらは年度によって変更があり、例えば令和5年度を例にあげると「創業・第二創業後5年以内」「えるぼし認定を受けている」といった項目があります。

(出典:ものづくり補助金の書き方|ミラサポplus

ものづくり補助金の活用事例

国が運営する補助金関連サイト「ミラサポplus」より、ものづくり補助金を活用した事例を3つ紹介します。

松下農園

【補助事業】
環境制御システム導入による高糖度ミニトマトの生産効率向上への挑戦

【事業計画書の主なポイント】
他社との差別化を図るため、会社概要に自園のこだわりとビジョンを明記。具体的には「勘やコツを可能な限り排除し、様々な栽培データを取得したきめ細やかな品質管理」について記載しました。
また、「ミスト発生装置」「2層自動カーテン装置とCO2発生装置」「除湿機」といった主な導入設備について、客観的な数値を提示しながら見込まれる効果について説明しました。

【出典】
補助金の申請事例・ものづくり補助金①|ミラサポplus

福田製パン合資会社

【補助事業】
焼きたてパンの納入およびアレルギー対応パンや地元産品を使ったパンの開発

【事業計画書の主なポイント】
補助金導入のきっかけとして、地域企業が学校給食から撤退しつつあること、アレルギー対応パンの製造事業者が少ないことを挙げ、地域経済における事業の重要性を示しました。
また「事業目標」について、開発するパンを具体的に挙げ、学校・保育園・事業者に、どのように販売していくかを記載。各販路に対しての売上目標も具体的な数値をもって説明しました。

【出典】
補助金の申請事例・ものづくり補助金③ ~ アレルギーに対応した給食用パンの製造 ~|ミラサポplus

まとめ

ものづくり補助金は数ある補助金制度の中でも人気が高く、採択率は30~40%程度だとされています。ぜひ当記事の内容を参考に、申請に向けた準備を進めてみてください。

なお、ものづくり補助金の採択を受けたい場合、専門家にアドバイスしてもらうこともおすすめです。政府が運営する補助金・総合支援サイト「ミラサポplus」ではものづくり補助金の支援者・支援機関を検索することができます。

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この記事を書いた人
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コンノ

公務員として4年間、人事労務の実務経験あり。 これまで100名以上の事業者をインタビューしており、「企業や個人事業主が本当に悩んでいること」を解決できる記事を執筆します。

監修者
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辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を作り出した。
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