被保険者資格喪失届とは? 記入例や提出方法、証明書の交付手続きについても解説

従業員が退職する際には、さまざまな手続きが発生します。加入していた社会保険を脱退する際に必要となる「被保険者資格喪失届」もそのひとつです。

この記事では、健康保険と厚生年金における被保険資格喪失届の手続きについて解説します。

被保険者資格喪失届とは?

従業員が退職する際は、会社で加入していた社会保険を脱退する手続きが必要です。社会保険のうち、健康保険(公的医療保険制度)と厚生年金(公的年金制度)は、「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届」、雇用保険については「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出することが求められます。

これらの届け出は、国民健康保険・国民年金への切り替えや失業手当受給の手続きなどに必要となる証明書の交付を受けるためにも不可欠です。

また従業員が被保険者資格を喪失するケースは退職以外にもあり、以下に該当する場合は被保険者資格喪失届を提出しましょう。

被保険者資格の喪失日
画像出典:日本年金機構(従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き)

健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届にかかる提出書類

健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失の手続きにおいて提出する書類は、以下のとおりです。

  • 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届
  • 添付書類(協会けんぽの被保険者のみ)

協会けんぽ(全国健康保険協会)の被保険者は、以下の添付書類を併せて提出しましょう。

(1)本人および被扶養者の健康保険被保険者証
(2) 高齢受給者証、健康保険特定疾病療養受給者証、健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証(交付されている場合)

健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届は、日本年金機構のホームページよりダウンロードできます。

健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届(PDFまたはExcel/日本年金機構)
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/todokesho/hihokensha/20140722.html

資格喪失証明書は、被保険者資格喪失届の受理後に交付される

資格喪失証明書は、被保険者資格の喪失日または被扶養者でなくなった日等を証明するもので、国民健康保険や国民年金への切り替え手続きに必要となる書類です。

被保険者資格喪失届が受理されれば交付を受けることが可能になりますが、手続きをしなければ交付はされません。資格喪失証明書が必要な場合は、管轄する年金事務所(郵送の場合は事務センター)または加入する組合健保にて手続きを行いましょう。

協会けんぽの場合は、日本年金機構のホームページより「資格喪失等確認請求書」のダウンロードが可能です。

健康保険・厚生年金保険 資格喪失等確認請求書(PDF/日本年金機構)
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/todokesho/sonota/20141110.files/0000023365BtSTvVdlo1.pdf

資格喪失証明書の交付手続きは、企業側の義務ではない

被保険者資格喪失届とは異なり、資格喪失証明書の交付手続きは任意です。そのため退職する従業員に手続きを任せても問題はありません。

ただし、被保険者資格喪失届が提出されていない場合は、資格喪失証明書の交付を受けることができません。退職後のトラブルを防ぐためにも、必ず期限内に被保険者資格喪失届を提出するようにしましょう。

資格喪失証明書は再交付が可能

資格喪失証明書を紛失した場合は、所定の手続きを行うことで再交付が可能です。従業員から紛失の相談を受けた場合は、再交付ができる旨を伝えると良いでしょう。

協会けんぽの場合は、日本年金機構のホームページより再交付に必要な書類「適用関係通知書等再交付依頼」のダウンロードが可能です。組合健保の場合は組合ごとに書類が異なるため、各組合に問い合わせてもらうようにしましょう。

健康保険・厚生年金保険 適用関係通知書等再交付依頼(PDFまたはExcel/日本年金機構)
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/todokesho/sonota/20201104.html

健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届の提出の流れ

被保険者資格喪失届の提出は、以下のステップで進めます。

  1. 「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届」に必要事項を記入する
  2. 年金事務所へ書類を提出する

提出期限は事案発生から5日以内のため、速やかに準備し、提出することが必要です。

それでは各ステップを確認しましょう。

1.被保険者資格喪失届に必要事項を記入する

日本年金機構のホームページより「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届」をダウンロードし、必要事項を記入します。

健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届(PDFまたはExcel/日本年金機構)
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/todokesho/hihokensha/20140722.html

※詳しい書き方は、健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届の記入方法で解説しています。

協会けんぽの場合は、添付書類を用意する

協会けんぽの被保険者は、健康保険被保険者証および高齢受給者証等(交付がある場合のみ)の添付が必要です。

万一、退職する従業員から健康保険証が返却されなかった場合は、添付書類の代わりに「健康保険被保険者証回収不能届」を提出しましょう。

健康保険 被保険者証回収不能届(PDFまたはExcel/日本年金機構)
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/todokesho/sonota/20120314-01.html

2.被保険者資格喪失届を提出する

記入済みの健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届を年金事務所(事務センターまたは管轄する年金事務所)に提出します。

提出方法および提出先は、以下のとおりです。

提出方法 提出先
電子申請
窓口持参
(紙媒体/電子媒体[CDまたはDVD])
管轄する年金事務所
郵送 事務センター

書類が受理されれば、手続きは完了です。

健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届の記入方法

退職による資格喪失の場合は、被保険者の「氏名」および「生年月日」に加え、以下(1)~(7)の項目に記入が必要です。

健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届の記入例
画像出典:日本年金機構(健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届記入例)

(1) 届書提出日

上記図(1)には、届出書の提出日を記入します。

(2) 事業所整理記号、事業所番号

上記図(2)には、事業所整理番号と事業所番号を記入します。記入モレや間違いがあった場合には手続きに遅れが生じる可能性があるため、正確に記入しましょう。

どちらの番号も日本年金機構から送付される、適用関係通知書や納入告知書等にて確認することができます。

(3) 事業所情報

上記図(3)には、事業所情報(住所・事業所名・事業主氏名・電話番号)を記入します。

(4)被保険者整理番号

上記図(4)には、退職する従業員の被保険者整理番号を記入します。

(5) 喪失年月日

上記図(5)には、喪失年月日を記入します。退職の場合の喪失年月日は、「退職日の翌日」です。

(6) 喪失原因

上記図(6)の喪失原因は「退職」を〇で囲み、退職日を記入します。

(7) 被保険者証の回収

被保険者証の添付枚数または返却不能枚数を記入します。

健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届の提出期限

健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届には提出期限があり、「事案発生から5日以内」と定められています。
提出方法にかかわらず、提出期限は同じです。提出が遅れないよう準備を進めましょう。

まとめ

健康保険・厚生年金保険 被保険資格喪失届は、事案発生から5日以内に提出しなければならない手続きです。加えて、この届出が受理されていなければ、国民健康保険等への切り替え手続きができないため、速やかに届出を行うことが推奨されます。

中小企業では業務を兼務している担当者も多く、従業員の退職時には業務が煩雑になることがあるかもしれません。被保険資格喪失届を含め、退職手続きをスムーズに進めるためには、従業員の退職が分かった時点で準備を始めることが必要でしょう。

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この記事を書いた人
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馬嶋 亜衣子(samusillee)

採用・キャリア関連、医療分野を中心に執筆を行うフリーランスライター。 各種メディアの取材ライティングやSEOライティング、採用HPのライティングなどに携わっています。

監修者
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辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を作り出した。
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