0から採用文化を作って初の新卒採用をスタートし、3年で社員数を約3倍にした“ぼっち人事”をご存知でしょうか。
株式会社ハートビーツの採用・広報を務める磯崎怜さんは、前社にてぼっち人事を経験し、現在は経営企画室で、採用と広報を担当しています。営業から人事へ転身した理由や、ぼっち人事で成果を出せた理由、そして採用を成功させる秘訣について伺いました。
営業から人事へ。未経験からのポテンシャル採用
目次
―新卒時代は営業だったとのことですが、今までのキャリアについてお聞かせください。
磯崎さん:1社目の営業職ではテレアポをしたり、派遣スタッフを採用したり、採用したスタッフの管理をしたりしていました。スタッフを派遣している現場の管理を行う請負管理者に自ら手を上げて、採用から生産・品質の管理、スタッフの教育まで担当するようになったんです。
「採用に携わったスタッフがどうしたら働きやすくなるのか」「どうしたら辞めずに続けようと思えるのか」などを考えて人事制度のような仕組みを作りました。スタッフの採用や教育をしたり、正社員へのキャリアアップをサポートしたりして人事のおもしろさを感じ、人事への転職を決めたんです。
―転職先の2社目ではどんなお仕事をなさったのですか?
磯崎さん:大手企業に入り、当時花形だと思っていた採用担当、リクルーター職に就きました。リクルーターはいかに優秀な新卒を採用するかがミッションですから、電話やランチ、ESの添削などを通じて学生を説明会へ誘導するものの、採用した後どうなるかはわかりません。
本当は採用した後のキャリアアップに携わりたかったので、もっと小さな会社で入社前から入社後まで全人事を担当したいと考え、スタートアップ企業に転職しました。人事関連では請負管理とリクルーターしか経験したことがありませんから、ポテンシャル採用でした。
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ぼっち人事はどうやって全社を巻き込んでいったか
―その会社では、人事がひとりだけだったんですよね。
磯崎さん:はい、ぼっち人事でした。当時20名くらいの会社で人事部門の立ち上げと初の新卒採用を任され「3年で採用文化を作ります」と宣言して入社したんです。入社前から「1年目は自分が人事業務のほぼ全てを担当し、2年目から徐々に現場主導に切り替え、3年目は現場主導で企画が走る状態にする」という計画を立てていました。
採用文化がないところからのスタートで、最初は社員も「忙しくて採用に協力するのは難しい。教育する時間がないから新卒ではなく即戦力の中途だけ採用してほしい」というような状態でした。予想以上に採用に対する理解がなく、正直戸惑いましたね。
―周りの共感が得られないなか、どのように人事部門の立ち上げを始めていったのですか?
磯崎さん:まずはトップダウンの啓蒙活動が必要だと考え、経営者を巻き込んで採用キックオフを開催しました。採用が最優先の経営課題であること、そのために新卒採用をすることを改めて伝え、新卒採用の意義や必要性の理解を促しました。
人事である私自身も社員との人間関係を構築しなければ巻き込むことはできません。社員全員とランチに行って、人間関係を0から作っていきました。特に大切なのは、協力的なキーマンを巻き込むことです。非協力的な人に無理してアプローチするより、協力的な人を巻き込んで少しずつ任せていくようにしました。
―人間関係を構築する際に意識したことはありますか?
磯崎さん:エンジニア採用をするにあたり、毎日エンジニアの専門用語の勉強をしました。ほかにも人事交流会や勉強会などのイベントに参加してインプットし続け、人事としてのスキルアップをするとともに信頼される人事になれるよう努力しました。
―特に効果的だった取り組みは何でしょうか。
磯崎さん:内定者インターンのプロジェクトの責任者を、入社半年の新卒に任せる取り組みが社内活性化に繋がりました。新卒採用施策は重要な経営課題の一つです。若手がその責任者としてプロジェクトに0から携わることで、若手自身にも当事者意識が生まれますし、周りも「新卒だから助けてあげよう」という意識が芽生えて協力的になったり「入社して半年の新卒が頑張っているんだから自分も頑張ろう」と意欲的になったりします。内定者インターンで活躍した学生が新卒入社することで、新卒採用を肯定的に捉える社員も増えました。
ほかにも入社式や内定者懇親会、キックオフイベント、社員旅行など社内イベントを多数企画して、自分がいなくても採用関連の企画を考案・実行してもらえるような強力体制を作り、社員は20名ちょっとから60名にまで増えました。計画通り、3年で採用文化をつくることができたと思います。
話題の施策より自社に合った施策を運用する
―採用を成功させるために注意すべきことは何だと思いますか?
磯崎さん:個人的には、理念やバリューを採用の軸にして自社に合った施策を行うのがいいと思います。人気の施策や他社の成功事例を見ると真似したくなりますが、自社でも同じやり方でうまくいくとは限りません。
たとえばリファラル採用促進のための表彰制度や数字目標は、競争心が強い体育会系の会社ならハマる可能性が高いものの、全ての会社に当てはまるわけではないです。実際にはノルマを嫌がる人も多いでしょう。どんな施策にせよ、あくまで会社の理念や社風に合ったものを選ぶのがベターではないでしょうか。
―自社に合った施策かどうか見極めるための具体的な方法はありますか?
磯崎さん:熱い社風なのかゆったりした社風なのか考えると大体の方向性が見えてきます。その施策によって社員が心地よく感じている雰囲気が阻害されないか、社員がしらけないかをイメージすれば、なんとなく見極められると思いますね。
あと、施策の見直しも重要です。特にトラブルはなくとも、定期的に見直してだれも使っていない制度は放置せずに廃止したほうがいい。組織開発や制度設計では、こうしたトライ&エラーが成功のカギです。しっかり運用していれば、社員にも信頼されます。
―地道な努力が大切ですね。
磯崎さん:組織作りや採用に劇的な解決法はないので、採用して終わりにせず、地道な運用や広報活動をすることで差がつきます。あとは、求職者とは常にフェアな関係を心がけ、上から目線の採用スタンスはとらないことも大切です。私はあえて志望動機を聞かず、求職者からの質問を積極的に受け付けます。ミレニアル世代はお互いに共感できるかを重視しているので、たくさん質問してもらって会社と価値観が合うか見極めてほしいと思っています。
SNSと採用サイトも積極的に運用し、時代に適応
―磯崎さんはツイッターも活用されていますが、どのように運用しているのでしょうか?
磯崎:「1日1ツイート」とだけ決めて、自分の考えを発信しながら無理せず楽しんでいます。フォロワーが500人くらいまではゆったり伸びていって、それ以降は停滞期もなく自然と増えていきました。
人事など興味のある分野で活躍されている方のツイートを追っているのですが、刺激を受けたツイートは引用リツイートして自分の考えを述べることもあります。DMで組織開発について相談をしたこともありました。ツイッターからの応募はまだありませんが、人事仲間が増えたり、今回のような取材依頼が来たりといろいろな恩恵を受けています。
―採用サイトも新しく作ったとのことですが、何かきっかけがあったのでしょうか。
磯崎さん:求職者にとって必要な情報が不足していたからです。コロナ禍もあって採用のオンライン化が進む今、情報の量や質が不十分な採用サイトだと機会損失が起きてしまいます。より多くの情報をオープンにするために、ペルソナ設定から着手して1年かけて作りました。
採用サイトはすぐに効果が出るものではありませんが、会社を理解してくれている応募者が増えましたね。カジュアル面談の質が上がったと感じます。
―最後に、今後の展望について教えてください。
磯崎さん:人事は広報やマーケティングから頑張らないと、中小企業は会社の認知すらされません。今は学校のオンライン授業に登壇し、セミナーをしたり、エンジニアと技術的な授業をしたり、パネルディスカッションに参加して、採用の種まきをしています。
意識しているのは、自社の説明よりも学校や学生にとって有益な情報を届けることです。業界のこと、インフラエンジニアのことなどを話したほうが興味を持ってもらいやすく、声をかけてもらう機会が増えます。これからもこうした地道な活動を続けながら、人事の土台を作っていきます。
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