※本記事は株式会社Flucle、HRbase社会保険労務士事務所の社会保険労務士が執筆しました。
数カ月前までは予想していなかった、新型コロナの大流行。国の対応には批判もありますが、会社と雇用を守るべく、多くの助成金が出ています。
まだまだ情報が出揃っていない面もありますが、緊急事態対応に奔走されている経営者・人事労務担当者のお役に立つ3つの助成金を、社会保険労務士がご紹介します。
目次
「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」
「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」は、小学校等に通う子を持つ社員が子の世話をするために会社を休み、会社が特別に有給休暇を与えるとき、その分の給与が全額支給される助成金です。育児中の社員を守りたいと思う会社にとって、大きな救いになるはずです。
助成金の概要
対象者
以下の1か2のどちらかを満たす子をもつ労働者(パートも含む)
- 新型コロナウイルス感染拡大防止策として、臨時休業した小学校等(※)に通う子
小学校等とは:小学校、義務教育学校(小学校課程のみ)、特別支援学校(高校まで)、放課後児童クラブ、幼稚園、保育所、認定こども園等
※中学校、高校は含まないことに注意してください。 - 風邪症状など新型コロナウイルスに感染したおそれのある、小学校等に通う子
条件
助成金を支給されるためには、以下の条件を両方満たす必要があります。
- 労働者が子供の世話をするために会社を休んだ。
- 会社が労働基準法上の年次有給休暇とは別の休暇を与え、その日の賃金を全額払った。
助成金支給額
休暇中に支払った賃金相当額が支給されます。
※ 支給額は8,330円を日額上限とする。
※ 大企業、中小企業ともに同様の金額とする。
注意事項や書類
対象期間
期間は令和2年2月27日~6月30日です。
雇用契約上、出社予定日(労働日)となっている日に限ります。
申請期限
令和2年3月18日~9月30日
申請書類
申請書類は、以下の厚生労働省のサイトからダウンロードできます。
参考|厚生労働省サイト
注意事項
- 申請期限内に学校等休業助成金・支援金受付センター(助成金の申請窓口)に、申請書類が届いていないと助成金はもらえません。
- 雇用保険加入者と未加入者では、作成する書類が異なります。対象者の雇用保険加入の状況を確認して作成をしてください。
- 申請は企業で1回のみです。会社全体の対象者を確認して、まとめて申請をしてください。
申請方法
支給申請の流れ
ステップ1.特別休暇を取得させる
保護者である労働者が休む場合に特別休暇を付与します。
ステップ2.賃金を支払う
特別休暇を付与した日は、賃金を全額支給します。
ステップ3.助成金の支給申請をする
支給申請は、会社単位になります。申請先は4つに分かれており、郵送で行います。郵送先は、会社として雇用保険の番号を取得してる都道府県の窓口へ、簡易書留など配達記録が残る方法で郵送します。
事業所単位で雇用保険に加入しているときは、人事労務管理を行っている本社等の都道府県の窓口へ郵送してください。
申請窓口
学校等休業助成金・支援金受付センター ■北海道地区 〒550-8798 大阪西郵便局私書箱62号 ■北陸、中部、九州・沖縄地区 (新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、愛知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄) 〒176-6025 東京都豊島区東池袋3-1-1サンシャイン60 25階 ■関東地区 (茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川) 〒100-8228 東京都千代田区大手町2-6-2 6階662執務室 ■東北、関西、四国、中国地区 (青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、三重、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知) 〒105-0014 東京都港区芝2-28-8 芝二丁目ビル4階
問い合わせ先
学校等休業助成金・支援金、雇用調整助成金、個人向け緊急小口資金相談コールセンター 0120-60-3999 受付時間:9:00〜21:00(土日・祝日も同じ時間)
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「時間外労働等改善助成金 新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース」
テレワークを導入した際に支給される助成金は、以前からありました。しかし時期的に、すでに締め切られており、今からテレワークを導入したいと思っても間に合いません。そのため今回のコロナウイルスの流行を受けて支給額や要件が改まり、今申請できる助成金として発表されたということです。
助成金の概要
対象企業
以下のすべてを満たす企業
- 中小企業
- 今までテレワークを行ったことがない
- 実施期間中(2月17日〜5月31日)に1人以上がテレワークを実施した
対象費用
- テレワーク用通信機器の導入や運用費(WEBカメラ、スピーカーなど。パソコン、スマホは除く)
- クラウドサービスの導入費
- 就業規則や労使協定等の作成、変更(社労士の作成費用、コンサルティング料など)
- 労務管理担当者や労働者に対する研修、周知啓発にかかる費用
助成金支給額
対象の費用の1/2 ※ただし上限額:100万円(1企業当たり)
注意事項や書類
申請書類
申請書類は、以下の厚生労働省のサイトからダウンロードできます。
リーフレットも一緒にダウンロードし、参考にすることをおすすめします。
参考|厚生労働省サイト
注意事項
- この時間外労働等改善助成金は、中小企業限定で申請が可能となっています
- 計画の事業をおこなう上で、経費の算出がわかる書類が必要です(見積書など)
- 労働時間改善委員会を実施したことがわかる全体写真、議事録、議事次第が必要です
- 周知されたことがわかる書類が必要です(掲示している写真など)
- 対象費用の支払いは、クレジットカードはNGです
- 機器を導入したときは、請求書、納品書、支払ったことがわかる書類が必要です
申請方法
【前半】交付申請の流れ(事前準備)
ステップ1.書類を用意する
ステップ2.担当者とその職名を決める
労働者から、労働時間の意見や苦情を受け付ける担当者1名と、職名を決めましょう。たとえば「イキイキ労働時間改善委員」など、社内で決めておきましょう。
ステップ3.労働時間等設定改善委員会の名称を決める
ステップ4.事業実施の予定時期と、社内周知の方法を決める
以下ステップ6以降を実施し、完了させる時期を設定します。社内への周知方法も決めておきましょう。メールもしくは掲示など、書面で確認でき、写真が取れる方法である必要があります。
ステップ5.「時間外労働等改善助成金交付申請書」を、テレワーク相談センターに提出する
4~6のあとでも提出可能ですが、5月29日必着となっています。
【後半】支給申請の流れ(計画期間内)
ステップ6.ステップ2・3で決めたことを、4の方法に従って社員に周知する
ステップ7.事業実施期間中(2月17日~5月31日)に、対象費用となること(テレワーク用通信機器の導入や社労士による就業規則作成、研修など)を行う
ステップ8.事業実施期間中(2月17日~5月31日)に最低1人がテレワークを行う
テレワークを行ったと申請する日の業務時間に、就業していたことが証明できる資料(出勤簿、年休簿、賃金台帳、タイムカードなど)が必要となります。
ステップ9.事業実施期間終了後、テレワーク相談センターに郵送する(令和2年7月15日必着)
問い合わせ先・申請先
テレワーク相談センター (電話:0120-91-6479) 上記フリーダイヤルがつながらないときは:03-5577-4724、03-5577-4734(〜5月31日まで)
その他テレワークに関する助成金・補助金については以下の記事で解説しています。
⇒ テレワークの導入に使える助成金(補助金)3選|新型コロナウイルス対策
「時間外労働等改善助成金 職場意識改善特例コース」
テレワークの助成金同様に、特別休暇の規定をつくる会社にも助成金が出るようになりました。ルールの整備にかかるコストを賄うことができます。
助成金の概要
対象企業
以下のすべてを満たす企業
- 中小企業
- 労災保険に加入している
- 実施期間中(2月17日から5月31日)に特別休暇の規定の整備を行う
対象費用
- 労務管理用機器等の購入や更新(タイムカードや、労務管理システムの導入費など)
- 就業規則や労使協定等の作成、変更(社労士の作成費用、コンサルティング料など)
助成金支給額
対象の費用の3/4
※事業規模30名以下かつ労働能率の増進に資する設備・機器等の経費が30万円を超える場合は、4/5を助成
※ただし上限額:50万円(1企業当たり)
注意事項や書類
申請書類
申請書類は、以下の厚生労働省のサイトからダウンロードできます。
参考|厚生労働省サイト
注意事項
- この時間外労働等改善助成金は、中小企業限定で申請が可能となっています
- 1つの設備の費用が12,000円を超えるときは、相見積もりが必要になります
- 労働時間改善委員会を実施したことがわかる全体写真、議事録、議事次第が必要です
- 周知されたことがわかる書類が必要です(掲示している写真など)
- 対象費用の支払いは、クレジットカードはNGです
- 機器を導入したときは、請求書、納品書、支払ったことがわかる書類が必要です
申請方法
【前半】交付申請の流れ(事前準備)
ステップ1.書類を用意する
ステップ2.担当者と、その職名を決める
労働者から、労働時間の意見や苦情を受け付ける担当者1名と、職名を決めます。たとえば「イキイキ労働時間改善委員」など、社内で決めておきます。
ステップ3.労働時間等設定改善委員会の名称を決める
ステップ4.事業実施の予定時期と、社内周知の方法を決める
以下ステップ6以降を実施し、完了させる時期を設定します。社内への周知方法も決めておきましょう。メールもしくは掲示など、書面で確認でき、写真が取れる方法である必要があります。
ステップ5.交付申請書(計画書)を提出する
項目を埋めた交付申請書(計画書)を、「都道府県労働局 雇用環境・均等室 企画課」に、郵送または持参にて提出します(令和2年5月29日必着)。
【後半】支給申請(計画期間内)
ステップ6.ステップ2・3で決めたことを、4の方法に従って社員に周知する
ステップ7.労働時間等設定改善委員会を実施する
支給申請時に、その会への参加者名簿や議事録、写真の提出が求められますので、開催時の記録はきちんと取っておきます。名称は、ステップ3で決めた名称で実施してください。
ステップ8.事業実施期間中(2月17日〜5月31日)に特別休暇の制度を導入した就業規則を施行する
ステップ9.各都道府県労働局の雇用環境・均等室に、必要書類を提出する(令和2年7月15日必着)
問い合わせ先・申請先
都道府県労働局 雇用環境・均等室 企画課 *企業の所在地を管轄する労働局へお問い合わせください。 厚生労働省資料|時間外労働等改善助成金(職場意識改善特例コース)のご案内
まとめ
否応なしに対応が迫られている、さまざまな制度導入。今は緊急事態ではありますが、国の導入支援があるうちに、検討をしてみましょう。これらの助成金は、今後も要件の拡大や変更が予想されます。そのとき最新の正しい情報を得て、会社のリスクを最小限に食い止める行動は、この危機的状況を乗り切ったあとの「働きやすさ」にもつながるはずです。
助成金の申請だけではなく、在宅勤務など多様な働き方に対応するため、労務管理の基盤をととのえる必要性が上がっています。
新型コロナウイルスの影響は、年単位で続くと見込まれています。長期にわたる経済危機を乗り越るための助成金としては、「雇用調整助成金」の活用も進んでいます。
雇用調整助成金に関しては以下の記事で解説しております。
⇒ 雇用調整助成金とは?申請方法や対象企業など徹底解説|新型コロナウイルス対策
※本記事は株式会社Flucle、HRbase社会保険労務士事務所の社会保険労務士が執筆しました。
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