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人材ポートフォリオとは?目的と作る際のポイントを解説

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[公開日]2021.06.14
[更新日]2021.06.17

人材ポートフォリオは、企業の経営目標を達成するうえで有効な人事マネジメント手法です。労働力不足や企業競争の激化などを背景に、注目を集めています。しかし、人材ポートフォリオについて詳しく知らない人は多いのではないでしょうか。また、これから作成しようと考えており、理解を深めたい人もいるでしょう。

本記事では、人材ポートフォリオの概要や目的、作る際のポイントを紹介します。企業の人事採用担当者は、ぜひ参考にしてください。

人材ポートフォリオとは

人材ポートフォリオとは、経営目標を達成するうえで「どのような人材がどのくらい必要なのか」を分析する人事マネジメント手法です。企業成長に欠かせない要素である人的資源を見える化し、人事に関わる業務や戦略の効率性・生産性を高めます。

人材ポートフォリオは、下記図のように人材を4つのパターンに分類する方法が一般的です。なお、図に用いている「創造-運用」「組織-個人」の軸や、4つの人材タイプは、あくまで一例です。

【各人材タイプの定義例】
・マネジメント人材:組織の経営に関わる将来的な幹部候補になる人材
・クリエイティブ人材:創造的な取り組みにより、業績向上に貢献できる人材
・オペレーション人材:確立された仕組みに沿って日常の業務を遂行する人材
・エキスパート人材:特定分野において熟練した専門性を有している人材

上記図のような人材ポートフォリオを作成する際は、以下4つのステップを踏む必要があります。

【人材ポートフォリオを作成する4つのステップ】
・自社の経営目標を達成するうえで重要な2つの軸を決める
・設定した軸をもとに、人材を4つのタイプに分ける
・4つのタイプごとに必要な人材数を決める
・人材の適正配置を考える

自社の実情や経営目標を整理しながら、各ステップを丁寧に踏んでください。

人材ポートフォリオの目的

人材ポートフォリオの目的は、自社の経営目標を達成するために、人事戦略の効率性・生産性を高めることです。特に、下記の取り組みに効果があります。

人材の過不足把握

既存人材を自社が求める4つのタイプに分類することで、経営目標達成の実現に必要な人材の過不足を把握できます。「3年後に予定しているビジネス展開には、100人のクリエイティブ人材が必要」など、中長期的な視点での分析も可能です。分析結果を採用活動に落とし込めば、企業が獲得すべき人材が明確になり、採用力を最大限に高められます。

適材適所への配置

従業員を適材適所に配置するうえでも効果的です。たとえば、クリエイティブ人材に該当する従業員であれば、個人で業務を進められる部署に配置すると、創造性を存分に活かせます。マネジメント人材の従業員には、企業経営の根幹を担うような業務を任せると良いでしょう。

 

近年は、少子高齢化や人材の流動化を背景に、市場全体の人材不足が続いています。グローバル化が進んでおり、企業同士の競争も激しくなっている現状です。また、中小企業は、大企業と比べて資源が限られています。限られた資源で競争を勝ち抜くためには、一人ひとりの人材を最大限に活かすための工夫が不可欠です。

人材ポートフォリオは、資源に余裕がある大企業が行うものと誤解されている場合がありますが、中小企業こそ作成すべきだと言えます。

人材ポートフォリオを作る際のポイント

人材ポートフォリオは、ただ何となく作っても目的の実現につながりません。効果的な人材ポートフォリオを作るためには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。

特に重要なポイントは、以下の5つです。

全従業員を対象とする

人材ポートフォリオを作る際は、雇用形態にかかわらず、全従業員を対象としてください。すべての従業員が経営目標達成に関わっているため、雇用形態を限定すると人材の活用が不十分となります。
たとえば、正社員だけで人材ポートフォリオを作成した場合に、オペレーション人材が不足していたとします。しかし、オペレーション人材の多くを派遣従業員やパート従業員が占めているのであれば、企業全体としてオペレーション人材が不足しているとは言えません。

雇用形態にかかわらず、すべての従業員が企業にとって貴重な人材です。派遣やパート、アルバイトなど、企業が雇用しているすべての従業員を対象としましょう。

人材タイプに優劣を付けない

分類する4つのタイプに優劣を付けないこともポイントです。人材ポートフォリオは、自社の人材状況を客観的な視点で把握するためのものです。作成者の個人的な感情が反映されてしまうと、企業が間違った方向に進む可能性があります。
たとえば、クリエイティブ人材よりもマネジメント人材を優遇してしまえば、組織の専門性や創造性は欠けてしまうでしょう。また、人材に優劣を付けていることが組織内に知れ渡った場合、従業員は不満を抱くはずです。結果として、モチベーションの低下や離職率の上昇などを招く懸念もあります。

人材を大切にする意味でも、公平な目線を大切にしてください。

経営戦略を踏まえる

人材ポートフォリオの軸や必要人材数を決める際は、自社の経営戦略を踏まえた検討が重要です。経営戦略を反映することで、人材ポートフォリオの最終的な目的である「企業目標の達成」に向けた一貫性が生まれます。
たとえば、経営戦略において従業員の若返りを図っている場合、軸のひとつを「ベテラン-若手」と設定すれば、若返りの実現がスムーズに進みます。一方で、高い専門性を活かした革新的な取り組みを起こしたいと考えている場合、「ベテラン-若手」よりも「創造-運用」や「変革-実務」を取り入れた方が良いでしょう。

経営戦略を無視した人材ポートフォリオでは、企業の方向性が明確でなくなります。自社における経営戦略を整理したうえで、正確に反映してください。

作成に負担がかかることを理解しておく

人材ポートフォリオの作成にあたっては、人事採用担当者以外にも負担がかかります。作成には時間と手間がかかることを、あらかじめ理解しておきましょう。人材ポートフォリオは、自社における人事マネジメントの在り方・方向性を左右するといっても過言ではありません。作成にあたっては、企業の上層部や管理職などで話し合いを重ねる必要があります。さらに、すべての従業員を分類するため、分析にも時間がかかるでしょう。

人事採用担当者は、人材ポートフォリオを実際に運用したい時期から逆算して、早めに作成を始めることが重要です。あらかじめ負担の大きさを知っておけば、段取りや他の業務との調整がスムーズに進みます。

従業員の意向も尊重する

人材ポートフォリオの作成にあたっては、従業員の意向を尊重することを忘れないでください。各従業員には、描いているキャリアや挑戦したい分野があるため、企業側の一方的な分類だけでは現状が正確に反映されません。たとえば、本人がクリエイティブ人材としてキャリア設計を望んでいるのに、企業が勝手にマネジメント人材に分類すれば、双方の人材タイプに1人分の過不足が発生します。

また、一方的に分類されることで、モチベーション低下や企業に対する信頼喪失を引き起こす場合もあるでしょう。全従業員への対応は困難かもしれませんが、企業として従業員の意向を反映させる姿勢を見せることが重要です。

まとめ

人材ポートフォリオは、「経営目標を達成するうえで自社に必要な人材」を見える化したものです。人材を4つのタイプに分類し、人材の過不足把握と適材適所への配置を実現させます。分析結果を活かせば、採用活動の生産性・効率性を高めることも可能です。

効果的な人材ポートフォリオを作成するためには、「全従業員を対象とする」「人材タイプに優劣を付けない」など、複数のポイントがあります。ポイントを押さえて作成することで、人材ポートフォリオの効果を最大限に高められます。

企業間の競争が激しくなる中、限られた人材で最大限のパフォーマンスを発揮するためには、人材ポートフォリオの活用が有効です。ぜひ、本記事の内容を参考に、人材ポートフォリオの作成・運用を検討してみてください。

この記事を書いた人

紺野天地

紺野天地

フリーランスのライター。4年間地方公務員として人事労務を担当し、1年間の民間企業勤務(教育系)を経てフリーライターに。人事労務の実務経験や自身の多様な働き方を活かし、HR系のメディアを中心に記事を執筆しています。

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