話題の給与前払いサービスとは?法的問題の有無とメリットを解説

給与に関する福利厚生のひとつが「給与前払いサービス」です。給与前払いサービスの導入には、従業員の満足度を向上させる効果が期待できます。

従業員の満足度向上は、離職率の低下や求職者へのアピールにつながるため、人材確保にも効果的です。数ある福利厚生の中でも「導入の手軽さ」に長けており、給与前払いサービスに関心を持っている企業は多いでしょう。

なお、「前払い」は「前借り」と異なるため、間違った運用をしないためにも、正しい理解が重要です。さらに、給与前払いは、正社員・パート・アルバイトの全雇用形態が利用でき、幅広い従業員に適応できる福利厚生として、理解を深めておいて損はありません。

本記事では、給与前払いサービスについて、法的問題の有無やメリットを踏まえて詳しく解説します。おすすめのサービスも紹介するため、企業の人事担当者はぜひ参考にしてください。

そもそも給与前払いとは?

給与前払いとは、従業員が実際に働いた分の給与を、会社規定の支払日より早く支給することです。本来の支払日には、前払いした分を差し引いて支給します。

たとえば、1ヵ月分の給与総額が20万円の場合、10万円を前払いすれば、本来の支払日に支給する額は10万円です。
正社員に限らず、アルバイト・パートなどに対する福利厚生として、給与前払いを実施している企業も多くあります。

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給与前払いは法的に問題ない?

給与前払いは、法的に問題ありません。ただし、企業が従業員からの前払い申請に応じる義務が発生するのは、特定のケースのみです。根拠となる労働基準法第25条には、下記のとおり記載されています。

第二十五条 使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であっても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。

(出典:労働基準法|e-Gov法令検索

 

このように、従業員に非常事態が発生した場合であれば、企業は前払いに応じる法的義務があります。一方で、非常時以外の支払い範囲をどこまで認めるかは、企業が自由に決めて構いません。

なお、よく間違えられる「前借り」は、「前払い」とは異なります。働いた分の給与を支給日前に受け取る制度が前払い、まだ働いていない分の給与を受け取る制度が前借りです。たとえば、翌月分の給与を事前に受け取る場合は「前借り」に該当します。

企業には「前借り」に応じる法的義務はありません。前借りと前払いを混同しないように注意してください。

最近増えている給与前払いサービスとは?

給与前払いサービスとは、給与前払いの申請受付や金額計算、支給手続きなどの事務を代行してくれるサービスです。給与前払いサービスには「預託型」と「立替型」があり、それぞれ下記の特徴を持ちます。

  預託型 立替型
内容 サービス提供会社にあらかじめ一定の資金を預ける形式。サービス提供会社は預かった資金の中から前払い金を計算・支給する。 サービス提供会社が前払い金を立て替える形式。企業は、立て替えてもらった分の給与額をサービス提供会社に後日まとめて支払う。
メリット
  • 従業員への手数料負担が小さい
  • 資金の用意がいらない
デメリット
  • 資金の用意がいる
  • 残高不足になる可能性がある
  • 従業員への手数料負担が大きくなりやすい

立替型について、サービス提供会社からの一時的な借金にあたり、賃金業登録していない業者の利用は違法ではないかと思う人もいるかと思います。しかし、金融庁は、立替型の給与前払いサービスについて「違法ではない」との見解を示しているため、安心して利用してください。
(参考:グレーゾーン解消制度に係る事業者からの紹介に対し回答がありました|経済産業省

預託型は、資金の用意が必要となる分、従業員への手数料は少なくて済みます。立替型は企業への負担が少なく導入しやすい一方で、従業員への負担が大きくなりやすい点が特徴です。それぞれのタイプにメリット・デメリットがあるため、自社の状況や方針に合わせて選んでください。

給与前払いサービスを導入するメリット

給与前払いサービスが注目されているのは、企業や従業員にとってメリットがあるためです。自社での導入や効果的な運用のためには、どのような影響があるのかを押さえておく必要があります。

ここでは、給与前払いサービスを導入するメリットを3つ紹介します。

採用時の応募者増加

給与前払いサービスの導入は、採用活動時の応募者増加につながります。給与前払いは、従業員の生活を助けるうえで有効な制度です。

たとえば、多くの企業は月末締め・翌月払いで給与を支給するため、従業員は就職からの1ヵ月以上を無給で過ごさなければなりません。生活に充てる分の貯金がない人が給与前払いを利用すれば、金銭的に余裕が生まれ、精神的にも安心できるでしょう。

なお、応募者増加につなげるためには、求人内に「給与前払いOK」「給与前払いサービスあり」などの文言を盛り込んでアピールする必要があります。

人事担当者の負担軽減

給与前払いにかかる事務をサービス提供会社が代行してくれるため、人事担当者の負担が軽減される点もメリットです。人事部門が自分たちで給与の前払い事務を行う場合、下記の手間が発生します。

  • 従業員からの申請受付
  • 支給額の計算
  • 前払い分の給与データ作成
  • 振り込み手続き

前払いにかかる事務の負担が減れば、人事担当者は、採用や教育などのコア業務に専念できるようになります。人事部の業務は従業員の「働きやすさ」に直結するため、人事担当者の負担軽減は、結果として組織全体の生産性向上につながるでしょう。

離職率の低下

近年の働き方改革などにより、労働者はワークライフバランスを重視する傾向が強くなっています。給与前払いが可能であれば、従業員の生活に余裕が生まれやすくなるため、組織に対する満足度が高まるでしょう。結果として離職率の低下にもつながります。

市場の流動化や労働人口の減少により人材確保が難しくなっている中、離職率の低下は長期的な企業成長においても重要です。

給与前払いサービス【5選】

では、具体的にどのような給与前払いサービスがあるのでしょうか。自社に合ったサービスを導入するためには、特徴を比較しながら検討することが重要です。

ここからは、給与前払いサービスを5つ紹介します。おすすめのポイントを踏まえて紹介するため、自社での導入をイメージしながら参考にしてみてください。

Payme

blank(出典:Payme公式サイト

【特徴】

  • 導入にかかる初期費用がゼロ
  • 分かりやすいデザインで直感的な操作が可能
  • サポート体制が充実
  • 立替型

『Payme』は、導入にかかる初期費用が一切ないため、どのような企業でも気軽に導入できるサービスです。 デザインが分かりやすく直感的な操作が可能であり、初めて利用する従業員や人事担当者でもスムーズに馴染めるでしょう。

導入した企業には専用の相談窓口が用意され、マンツーマンで疑問や悩みを解決してくれます。動画付きの分かりやすいヘルプページも用意されており、給与前払いサービスの導入に不安がある場合でもおすすめです。

【運営会社】 株式会社ペイミー 様

希望日受取りサービス(フレックスチャージ)

blank(出典:希望日受取りサービス(フレックスチャージ)公式サイト

【特徴】

  • 大手銀行が運営している高い安心感
  • 新規の口座開設が不要
  • 最短で当日、遅くとも翌営業日までに振り込み可能
  • 預託型

『希望日受取りサービス』は、大手の三菱UFJ銀行による運営であるため、対応の丁寧さ・速さに定評があります。給与前払いサービスを初めて導入する企業でも、安心して利用できるでしょう。 利用にあたって、振り込み用の銀行口座を新たに開設する必要はありません。従業員が現在使っている口座への振り込みが可能であり、負担が最小限で済む点も特徴です。

前払い金は、営業日の午前9時30分までに申し込みが完了すれば、当日中に振り込まれます。9時30分を過ぎても翌営業日には振り込まれるため、急ぎで給与を受け取りたい従業員のニーズにも応えられます。

【運営会社】 三菱UFJ銀行 様

即給

blank(出典:さくら情報システム株式会社公式サイト

【特徴】

  • 従業員本人の申請だけで振り込みまでが完結
  • 24時間365日申請可能
  • 全国のATMで受け取り可能
  • 預託型

『即給』は、従業員本人がWeb上で申請するだけで、振り込みまでが完結する給与前払いサービスです。人事担当者を経由せずに手続きが進むため、生産性向上・業務効率化の恩恵を最大限に受けられます。

申請は、24時間365日いつでも受け付けており、従業員の幅広いニーズへの対応が可能です。さらに、全国のATMから前払い金を受け取れるため、満足度を大きく高められるでしょう。

【運営会社】さくら情報システム株式会社 様

前払いできるくん

blank(出典:前払いできるくん公式サイト

【特徴】

  • 最短で当日の導入が可能
  • 財務審査なし
  • 従業員を1人でも雇用していれば利用可能
  • 立替型

『前払いできるくん』は、導入の手軽さが特徴的なサービスです。最短で当日のうちに導入できるため、なるべく早く給与前払いを実施したい場合に、特におすすめできます。サービス利用にあたっての財務審査はなく、導入における企業側への負担はほとんどありません。

常勤・非常勤にかかわらず、従業員を1人でも雇用していれば導入できる点も特徴です。零細企業から中小企業、大企業まで、企業規模にかかわらず利用しやすいサービスだといえます。

【運営会社】 株式会社Payment Technology 様

キュリカ

blank(出典:キュリカ公式サイト

【特徴】

  • 利用ユーザー12万人の実績
  • 導入により応募者数6倍の事例あり
  • 従業員の本人確認手続きがWeb上で完結
  • 預託型

『キュリカ』は、2008年に社内向けサービスとして運用を開始してから、これまで12万人以上に利用されてきた実績があります。『キュリカ』の導入により応募者数が6倍となった事例もあり、採用力を高めたいと思っている場合にもおすすめです。

独自システム『eKYC』の活用により、申請における従業員の本人確認手続きは、すべてWeb上で行われる点が特徴です。従業員への負担が少なく、使い勝手の良いサービスだといえます。

【運営会社】 株式会社キュリカ 様

まとめ

給与前払いとは、実際に働いた分の給与を、規定の支払日よりも前に支給することです。法的にも問題はなく、前払いを認める範囲は企業の裁量によります。 給与前払いにかかる事務を代行してくれるサービスが、給与前払いサービスです。「預託型」と「立替型」の2種類があり、それぞれに特徴があるため、自社の状況や方針を踏まえて検討する必要があります。

なお、給与前払いサービスの導入には、「応募者の増加」「人事担当者の負担軽減」「離職率の低下」といったメリットがあります。

本記事では、おすすめの給与前払いサービスを5つ紹介しました。特徴や運営会社も紹介しているので、気になるサービスがあった場合は、ぜひ詳細を確認してみてください。

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採用Webマラボ編集部

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監修者
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辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を作り出した。
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