運送業界の人手不足の現状と対策|なぜ人が足りなくなるのか?

ドライバー

人手不足と言われる日本。身近なところでは飲食店や宿泊施設、コンビニなどの小売店など、人が足りないというニュースを度々目にします。
そんな中でも特に人材が足りていない業界の一つが、運送業界です。2017年の雇用人員判断指数によれば、運送業界は宿泊・飲食サービス業界に次ぎ雇用人材が足りないと判断されており、いかに人材不足かが分かります。
なぜ運送業界には人が集まらないのでしょうか。その実態や原因、そして対策方法を紹介していきます。

運送業界の人手が足りない現状

まずは運送業界にどのくらい人手が足りていないのか、実態を見てみましょう。ここではトラックドライバーの有効求人倍率や、実際の業務現場の“不足感”に焦点をあててみます。

トラックドライバーの有効求人倍率

ドライバーを含む、種別有効求人倍率参照:政府統計e-Stat 一般職業紹介状況『職業安定業務統計』をもとに作成

上記は2013年~2019年の有効求人倍率の推移です。「輸送・機械運転の職業全体」と、トラックドライバーを含む「自動車運転の職業」、そして比較対象として人手不足の課題を抱えている飲食・宿泊業界を含んだ「サービス業界の職業全体」の推移をグラフ化しています。

トラックドライバーを含む「自動車運転の職業」は赤いグラフですが、2013年からの6年間で2.15から3.78まで急激に上昇しており、人手不足が加速していることが如実に分かります。

トラックドライバーの不足感

トラック運送業界の景況感 参照:公益社団法人 全日本トラック協会『トラック運送業界の景況感』をもとに作成

上記はトラック運送業界の労働力の不足感を業況判断指標に起こしてグラフ化したものです。数値が下がるほど現場の人手が足りていないという感覚を表しています。この推移を見ていただければ分かるように、2013年から2018年まで下がり続け、現在まで横ばいの状態が続いています。

つまり、現場は明らかに人手不足に悲鳴を上げているということに他なりません。

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なぜ運送業界は人手不足に陥っているのか?

前述のグラフが示すように、運送業界は深刻な人材不足に陥っています。では、なぜこのような状況が生まれているのでしょうか。その原因は、大きく4つ挙げられます。

高齢化と若手人材の不足

運送業界は、他の業界よりも高齢化が進んでいると言われます。実際に現場で働くドライバーのうち、約7割が40歳以上というデータもあるほど(参照:総務省『労働力調査(平成27年)』)。加えて29歳までの労働者比率は、なんと10%以下。こうした年齢層の歪みが続くと、今後人手不足は更に深刻になっていくとも予想されています。

低賃金のため

厚生労働省が発表する賃金構造基本統計調査によれば、全産業の平均年間所得額は491万円。これに対して大型トラックドライバーは454万円、中小型トラックドライバーは415万円と、平均より低い結果になっています。

企業や運転する車体・距離などによって給与は異なるため一概には言えませんが、平均の数字のみに目を向ければ、低賃金と言わざるを得ないでしょう。

一昔前、まだ規制が緩かった時代は、トラックドライバーは高収入な仕事でした。走れば走るほど収入は上がり、中には年収1000万円を超える方も。もちろんそれだけ大変な仕事だったと思いますが、それでも収入が高ければ納得して働く方も多かったはずです。しかし現在では労働基準法や道路交通法の改正により、トラックドライバーの収入は減ることになります。

労働環境改善という名目で運転業には『改善基準』という規定が設けられ、「4時間の走行ごとに30分の休憩」「勤務終了からその翌日の勤務までは8時間以上の休息を取らなければならない」といったルールが定められました。

結果的に休憩時間や休日数が多くなり、収入が減っているのです。また道路交通法の改正により、駐停車禁止が厳罰化されたり、トラックに高速道路90kmの速度制限が設けられたりと、ドライバーにとって仕事がしにくくなる足かせも増えています。

稼げる仕事だったはずのトラックドライバーが、「働き方改革」や規制強化によって、稼ぎたくても稼げない仕事になりつつあるといえます。

また、昨今はインターネット通販の商品配送が増えていますが、大手ECサイトなどは配送料も安く、運送会社が手にする報酬も少なくなっています。そのしわ寄せが、現場で働くドライバーの賃金にも影響を与えています。

長時間労働

労働環境は年々改善される傾向にありますが、やはりトラックドライバーの業務環境は過酷であることに変わりありません。
例えば荷待ち時間を含む拘束時間規制なども厳しくなっていますが、それでも原則は1日13時間以内。人手不足の中でも配送しなければならない荷物の量は増えていることを考えると、規制の時間内で業務が完了するわけではなく、結果として規定業務時間の超過などで対応しているケースも散見されます。

政府も運送業界の労働力確保と労働環境改善に向けて、法改正を進めるなどの対策を進めています。

良いイメージがない

トラックドライバーの仕事には、どうしてもネガティブなイメージが付きまといます。3Kを始めとした、収入の低さ、長時間労働や事故によって体を壊してしまうなど。こうしたイメージも、トラックドライバーの仕事を選ばない理由といえるでしょう。

もちろんこのイメージ通りの職場ばかりではありません。「トラガール」をはじめとした女性や年配の方が活躍されている職場もあれば、高い収入を得られる職場もあります。

ネガティブなイメージが先行し、実態がきちんと伝わっていないのも課題かもしれません。

人手不足への対策方法

では、トラックドライバーの人手不足には、どんな対策をすればよいのでしょうか。ここでは着手しやすい4つの方法を紹介します。

女性ドライバーの採用

トラックドライバーの女性比率は、わずか3%以下と言われています。労働力確保のためには、女性の採用は必須ともいえるでしょう。
現在は国土交通省主導で「トラガール促進プロジェクト」という女性ドライバー増加への取り組みなども行われています。

本格的に女性を採用しようとすれば、もちろん産休・育休や負担軽減、職場の清潔感を含め、女性が仕事をしやすい環境作りなども進めなければなりません。もちろんすぐには難しい部分も多いと思いますが、長い目で見れば女性だけでなく若手を採用していくために、早いうちから着手していくべきでしょう。

職場や労働環境を改善する

現在の職場・労働環境の見直し・改善は、新たな人材の獲得のほか、既存社員の定着にもつながります。長時間労働、体力的な負担、職場の人間関係、休日の取りやすさなど、現在社員が不満に感じていることを吸い上げて改善することも、人手不足解消への一歩です。

トラックドライバーが転職先に選ぶ仕事として多いのは、やはりトラックドライバー。特に賃金や労働環境の悪さから転職してしまうケースが多い職種なので、職場や労働環境を整えることは他社からの人材獲得につながる近道になり得ます。

イメージアップのためのPR

どんな業界でも、求職者に対して積極的に情報発信をすることは非常に大切です。特にトラックドライバーの場合、前述したように世間一般ではネガティブなイメージを持たれている傾向にあります。だからこそポジティブな内容を積極的に情報発信していくことが重要です。

働きやすい制度や社風、社員の人間関係の良さ、特徴的な待遇など、求職者にとってメリットになりそうな情報があれば、小さなことでもしっかりと伝えていきましょう。情報発信用のwebサイトなどツールで困ることもあるかもしれませんが、最近は簡単に始められるSNS等を使って発信する企業も増えています。

FacebookやInstagram、Twitterなどを活用すれば、コストを抑えながら情報を発信できます。

採用の効率化

採用業務自体を見直し、効率化することも重要です。

  • 採用計画
  • 予算の策定
  • 求人の掲載
  • 応募者の対応
  • 面接の実施
  • 入社までのフォローや交渉など

採用活動自体の効率化を進めることで、少ない人員・時間でより多くの求職者に出会うことができ、結果としてより多くの人材を迎えられる可能性が高くなります。

採用の効率化と聞くと「どうやって効率化すればいいか分からない…」と思われるかもしれませんが、すぐに始められるカンタンなものだと、採用管理ツールの導入などが挙げられます。

採用管理ツールとは、複数の求人媒体への掲載を一元化したり、応募者対応を1つのシステム上で行ったりと、採用業務全般を管理しやすくするためのシステムです。導入コストの低い採用管理ツールもあり、昨今は業界を問わず中小企業での導入も進んでいます。

まとめ

運送業界が人手不足に陥っている実態と原因、そして対策について解説しました。

昨今の運送会社では、労働環境の改善や情報発信なども進んでいますが、まだまだ着手出来ていない企業が多いことも事実です。早期に対策を取ることで、他社に先んじて人手不足を解消できる可能性も高まります。

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監修者
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辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を作り出した。
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