建設業許可とは?種類や取得要件、必要な書類について解説!

建設業者として一定規模以上の工事を行うには「建設業許可」が必要です。
しかし、建設業許可を取得するには要件を満たしている必要があり、誰もが簡単に取得できるわけではありません。制度の仕組みや手続きの流れをあらかじめ確認し、着実に準備を進めることが重要です。

今回は建設業許可の要件や申請の流れなど、取得にあたって知っておきたい情報を網羅的に解説します!

建設業許可とは

建設業許可とは、建設業を営むために必要な許可のことです。

建設業法に基づき、一定規模以上の建設工事を請け負う事業者に対して義務付けられています。以下のように、建設工事の請負額や工事の種類によって必要性が異なります。

工事の種類 請負金額
建築一式工事 1件あたり1,500万円以上(税込)
その他の建設工事 1件あたり500万円以上(税込)

建設業許可制度には、以下のような重要な意義があります。

  • 技術力の保証:一定の資格や経験を持つ技術者の配置を義務付けることで、工事の品質や安全性を確保します
  • 経営の健全性:財務状況や経営能力の審査を通じて発注者の利益を保護します
  • 法令遵守の促進:許可取得と更新の過程で、関連法規の遵守状況が確認されます
  • 業界の信頼性向上:許可制度により、建設業界全体の信頼性と社会的評価が向上します

建設業許可には様々な種類がある

建設業許可は大きく次の3点によって分類されます。

  • 許可する行政庁
  • 業種
  • 建設業許可の区分

それぞれの要素について詳しく見ていきましょう。

①許可する行政庁

建設業許可は、許可する行政庁によって「大臣許可」と「知事許可」の2種類に分かれます。

【大臣許可】
大臣許可は、国土交通大臣が発行する許可です。
2つ以上の都道府県にわたって営業所を設置する場合はこの「大臣許可」が必要で、本店の所在地を管轄する地方整備局が許可を出します。

【知事許可】
知事許可は都道府県知事が発行する許可であり、1つの都道府県内にのみ営業所を設置している場合に必要です。

大臣許可と知事許可は「営業所の所在地」で区分されるだけであり、営業や工事が実施できるエリアに制限はありません。つまり、例えば東京都の事業所が知事許可を受けても、埼玉県や神奈川県といった他道府県で営業や工事ができます。

②業種

業種は下表のとおり29種類あり、そのうち専門工事は27種類に分けられます。

大分類
土木一式工事、建築一式工事、専門工事(※)
※専門工事の分類
大工工事業、左官工事業、とび・土工工事業、石工事業、屋根工事、電気工事業、管工事業、タイル・れんが・ブロック工事業、鋼構造物工事業、鉄筋工事業、舗装工事業、しゅんせつ工事業、板金工事業、ガラス工事業、塗装工事業、防水工事業、内装仕上工事業、機械器具設置工事業、熱絶縁工事業、電気通信工事業、造園工事業、さく井工事業、建具工事業、水道施設工事業、消防施設工事業、清掃施設工事業、解体工事業

③建設業許可の区分

建設業許可は「一般建設業」と「特定建設業」に区分されます。
これは下請契約の規模によって決まっていて、具体的には下記のとおりです。

特定建設業 発注者から直接請け負った1件の工事代金について、4,500万円(建築工事業の場合は7,000万円)以上となる下請契約を締結する場合
一般建設業 上記以外の場合

発注者から直接請け負った1件の工事の規模が大きくても、その大半を自社で直接施工するなど、下請契約の総額が常時4,500万円未満であれば、一般建設業の許可でも問題ありません。

【出典】
建設業の許可とは|国土交通省

建設業許可を得るための要件は?

建設業許可を取得するためには、下記5つの要件を満たす必要があります。

  • 建設業の経営業務の管理を適正におこなう能力を有する者を設置する
  • 専任技術者を設置する
  • 人格
  • 資本
  • 欠格要件

これらの要件は、建設業法によって定められており、事業者の適格性や技術力を確保することを目的としています。以下に主な要件を詳しく解説します。

建設業の経営業務の管理を適正におこなう能力を有する者を設置する

建設業の経営には、専門的な知識と経験が必要です。
そのため、建設業許可を取得するには、経営業務の管理を適正に行う能力や経験を有する者を置く必要があります。
詳細な要件は下記のとおりです。

1. 建設業で5年以上経営業務の管理責任者としての経験があること
2. 建設業で5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務を管理した経験があること
3. 建設業で6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験があること
4-1. 建設業で2年以上役員としての経験があり、5年以上役員などの地位で常勤役員などを直接補佐する者として、「財務管理の業務経験」、「労務管理の業務経験」、「運営業務の業務経験」についての経験があること
4-2. 5年以上役員などの経験があり、建設業で2年以上役員などの地位で常勤役員などを直接補佐する者として、「財務管理の業務経験」、「労務管理の業務経験」、「運営業務の業務経験」についての経験があること

(出典:許可の要件|国土交通省

専任技術者を設置する

建設工事の適正な施工を確保するため、専門的な知識と技術を持つ技術者(専任技術者)を設置する必要があります。
専任技術者の要件は「一般建設業」か「特定建設業」かによって異なります。

【一般建設業】

  • 指定学科修了者で高卒後5年以上もしくは大卒後3年以上の実務経験がある者
  • 指定学科修了者で専門学校卒業後5年以上の実務経験、または専門学校卒業後3年以上の実務経験がある者で専門士もしくは高度専門士を称する
  • 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、10年以上の実務経験がある者
  • 国家資格者
  • 複数業種に係る実務経験がある者(※)

※「複数業種」についてはこちらのページでご確認ください
建設業法施行規則第1条|国土交通省

【特定建設業】

  • 国家資格者
  • 専任技術者要件を満たし、かつ、許可を受けようとする建設業に関して発注者から直接請け負い、その請負金額が4,500万円以上のものについて2年以上指導監督的な実務経験がある者
  • 指定建設業7業種に関して過去に特別認定講習を受け効果評定に合格した者、あるいは国土交通大臣が定める考査に合格した者

人格

仕事における「誠実性」が求められます。
具体的には、請負契約の締結やその履行に際して不正があったりと、不誠実な行為が明らかである場合は、建設業を営むことができません。
許可の対象となる法人や個人についてはもちろん、役員についても同様です。

資本

【一般建設業】
次のいずれかに該当すること。

  • 自己資本が500万円以上であること
  • 500万円以上の資金調達能力があること
  • 許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績があること

【特定建設業】
次のすべてに該当すること。

  • 欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
  • 流動比率が75%以上であること
  • 資本金の額が2,000万円以上かつ自己資本の額が4,000万円以上であること

欠格要件

建設業許可を取得する際には、建設業法第8条に規定する「欠格要件」に該当しないことも必要です。
欠格要件は14種類ありますが、主に以下のようなものがあります。

  • 破産者で復権を得ない者
  • 建設業法や他の法令の規定により許可を取り消され、その取消の日から5年を経過しない者
  • 建設業法や他の法令の規定により営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
  • 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に規定する暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
  • 精神の機能の障害により建設業を適正に営むに当たって必要な認知や判断、意思疎通を適切に行うことができない者 など

欠格要件の詳細はこちらのページで確認できます。
欠格要件|国土交通省

建設業許可の申請に必要なものは?

建設業許可の申請には、主に以下の3つの要素が必要です。

  • 建設業許可申請書
  • 手数料
  • その他の書類

それぞれの詳細について見ていきましょう。

建設業許可申請書

許可申請書は、建設業許可を申請するうえで最も基本的な書類です。
この申請書には以下の情報を記入する必要があります。

  • 申請者の氏名(法人の場合は名称および代表者の氏名)
  • 申請者の住所(法人の場合は主たる営業所の所在地)
  • 申請する許可の種類(一般建設業または特定建設業)
  • 申請する建設業の種類
  • 営業所に関する事項 など

許可申請書の様式はこちらの国土交通省のページでダウンロードできます。

手数料

建設業許可の申請には手数料が必要です。
手数料の金額は申請の種類によって異なり、具体的には下記のとおりです。

  知事許可 大臣許可
申請 9万円 15万円
更新 5万円 5万円
業種追加 5万円 5万円

その他の必要な書類

ここまで紹介していた以外にもさまざまな書類が必要です。
詳細については国土交通省のサイトでご確認ください。
【許可申請に必要となる書類の一覧】〈令和4年3月31日より適用〉

建設業許可の申請の流れを解説!

建設業許可を取得するまでの流れは下記のとおりです。

  1. 要件を満たしているか確認
  2. 許可申請書や書類の準備
  3. 予備審査を受け、申請書を提出する

各ステップで実施することについて解説します。

要件を満たしているか確認

最初に、自社が建設業許可の要件を満たしているかを確認する必要があります。
「建設業許可を得るための要件は?」の段落内で紹介した5つの条件すべてを満たしていることが必須なので、ひとつひとつ確認しましょう。

許可申請書や書類の準備

許可申請書をはじめ必要な書類を作成します。
個人と法人で提出すべき書類が異なるので、最初に「どの書類を準備する必要があるのか」を確認しましょう。

予備審査を受け、申請書を提出する

多くの場合、提出時の窓口で予備審査が行われ、問題がなければ申請書に受付印が押印され本申請に進みます。
例えば東京都は予備審査の予約が必須であったりと、自治体によって対応が異なるため事前にチェックしておきましょう。

本申請では、正式に申請書類を提出し手数料を納付します。
審査後に許可が決定すると「許可通知書」が交付されます。申請から許可までの期間は1〜3か月程度が一般的ですが、書類の不備や追加の調査が必要な場合は、さらに時間がかかる可能性があります。

※参考までに東京都における申請の流れはこちらのとおりです
建設業許可の申請|東京都都市整備局

建設業許可の有効期限はいつまで?

建設業許可の有効期限は、許可を受けた日から5年間です。
これは建設業法第3条第3項に明確に規定されています。

5年間の有効期限が切れる前に更新手続きを行うことが非常に重要です。更新を怠ると、建設業許可が失効し、建設工事の請負ができなくなる可能性があります。
更新申請は、有効期限の満了する30日前までに行う必要があります。ただし、余裕を持って手続きを進めることが推奨されます。多くの専門家は、有効期限の3〜6ヶ月前から準備を始めることを勧めています。

まとめ

建設業者として事業を成長させていく場合、建設業許可の取得は必須と言っても過言ではありません。仕組みや書類作成には複雑な部分もあるので、自分たちだけで進めるのが難しい場合は行政書士など外部の専門家を頼るのも良いでしょう。

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この記事を書いた人
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コンノ

公務員として4年間、人事労務の実務経験あり。 これまで100名以上の事業者をインタビューしており、「企業や個人事業主が本当に悩んでいること」を解決できる記事を執筆します。

監修者
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辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
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