介護職員等処遇改善加算とは?取得方法や貰える金額、算定要件を解説!

「介護職員等処遇改善加算」とは、2024年(令和6)年6月からスタートした新たな処遇改善加算です。介護事業所の人材確保と賃金アップを大きな目的として、それまで3種類あった処遇改善加算が一本化されました。

「介護職員等処遇改善加算について詳しく知りたい」
「新加算を取得するための手続き方法を知りたい」

今回は、そんな方向けに介護職員等処遇改善加算の概要や申請方法について紹介します。
介護事業所の担当者はぜひ当記事の内容を日頃の業務にお役立てください。

介護職員等処遇改善加算(新加算)とは?

介護職員等処遇改善加算は、介護職員の賃金改善に取り組む事業所に対して支給される加算です。

事業所は受け取った加算を介護職員の賃金改善に充てます。よく聞く「処遇改善手当」とは、この加算分をもとにした手当のことです。

2024年5月まで、介護分野の処遇改善制度は「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」の3種類でした。

それらが一本化され、2024年6月から「介護職員等処遇改善加算」としてより分かりやすい仕組みになっています。

支給対象

介護職員等処遇改善加算の支給は、経験・技能のある介護職員への配分を基本としますが、具体的なルールはありません。
厚生労働省は介護職員等処遇改善加算一本化の説明資料において下記のとおり言及しており、事業所ごとに柔軟に支給対象を設定できます。

一本化後の加算については、介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある職員に重点的に配分することとするが、事業所内での柔軟な職種間配分を認める。

支給金額

支給金額は、各事業所のサービス区分や加算区分によって異なります。
参考までに、訪問介護の加算率と加算対象となる条件について下表にまとめています。

区分

加算率

条件
職場環境の改善 昇給の仕組み 改善後賃金年額440万円 経験・技能のある介護職員
加算Ⅳ 14.5%      
加算Ⅲ 18.2%    
加算Ⅱ 22.4%  
加算Ⅰ 24.5%

※加算率は訪問介護を例にしています

この他、すぐに移行できない事業所のための経過措置として、2024年度中は暫定的に「新加算V1(1)~V(14)」が設けられています)。

※「新加算V」の加算率はこちらから確認できます
介護職員等処遇改善加算の加算率(サービス類型ごと・令和6年度中)|厚生労働省

支給形式

詳しくは後述していますが、介護職員等処遇改善加算の要件のひとつに「月額賃金改善要件」があります。
具体的には、新加算Ⅳ相当の加算額の1/2以上を「基本給または決まって毎月支払われる手当」の改善に充てなければいけません。

これまで賞与や特別手当として支給していた事業所は、月給として支給できるよう調整が必要です。

介護職員等処遇改善加算の施行時期

介護職員等処遇改善加算は2024年6月から始まっています。
2024年度中は経過措置がありますが、2025年度からは完全移行となるため、2024年度中に計画的な準備が求められます。

対象外のサービス

下記のサービスについては、基準上介護職員が配置されていないため介護職員等処遇改善加算の対象外となります。

訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、福祉用具貸与、特定福祉用具販売、介護予防訪問看護、介護予防訪問リハビリテーション、介護予防居宅療養管理指導、介護予防福祉用具貸与、特定介護予防福祉用具販売、居宅介護支援、介護予防支援

介護職員等処遇改善加算を取得するための手続きの流れ(2024年度)

介護職員等処遇改善加算の取得手続きは、以下の流れで行います。

1. 事業所による処遇改善計画書の作成、職員への周知
処遇改善計画書を作成し、その内容をすべての職員に周知します。
職員から質問があれば分かりやすく回答します。

2. 各自治体への書類提出
作成した計画書を自治体に提出します。
新規に加算を取得する場合、算定を開始する月の前々月の末日が提出期限となります。

3. 加算の算定開始
申請が承認された後、事業所は計画に基づいて処遇改善を実施し、介護職員等処遇改善加算を取得することができます。

4.実績報告書の作成、提出
介護職員等処遇改善加算を受給後、実績報告書を作成して自治体に提出します。

介護職員等処遇改善加算の配分ルール(2024年度)

介護職員等処遇改善加算の大きな目的は、介護現場で働く職員の賃上げです。
義務ではなくお願いという位置づけですが、今回の加算措置や賃上げ促進税制を活用することで、下記の賃金ベースアップを達成することを配分ルールとしています。

2024年度中:+2.5%
2025年度中:+2.0%

また、今回の報酬改定は処遇改善分を2年分措置しているため、事業所は2025年度分を前倒しして賃上げすることも可能です。新加算の加算額については2024年度~2025年度の2年間で全額が賃金改善に充てられていれば問題ありません。

【2024年6月以降の配分ルールイメージ】

(出典:処遇改善に係る加算全体のイメージ(令和4年度改定後)|厚生労働省

介護職員等処遇改善加算の算定要件

介護職員等処遇改善加算を算定するためには、下記3つの要件を満たす必要があります。

  • キャリアパス要件
  • 月額賃金改善要件
  • 職場環境等要件

各要件について詳しく解説します。

キャリアパス要件

キャリアパス要件は、各事業所において介護職員が自らの理想的なキャリアを築くことができるよう職場環境を整備するための要件です。
なお、要件Ⅰ~Ⅲは根拠とする規定を書面で整備したうえで、全介護職員に周知する必要があります。

要件区分 加算区分 要件内容
要件Ⅰ(任用要件、賃金体系) Ⅰ~Ⅳ 職位、職責、職務内容などに応じた任用などの要件を定め、それらに応じた賃金体系を整備する。
要件Ⅱ(研修の実施等) Ⅰ~Ⅳ 資質向上の目標や以下のいずれかに関する具体的な計画を策定し、研修の実施または研修の機会を確保する。
a 研修機会の提供または技術指導の実施、介護職員の能力評価
b 資格取得のための支援(勤務シフトの調整、休暇の付与、費用の援助など)
要件Ⅲ(昇給の仕組み) Ⅰ~Ⅲ 以下いずれかの仕組みを整備すること。
a 経験に応じて昇給する仕組み
b 資格などに応じて昇給する仕組み
c 一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み
要件Ⅳ(改善後の賃金額) Ⅰ、Ⅱ 経験・技能のある介護職員のうち1人以上は、賃金改善後の賃金額が年額440万円以上であること。
要件Ⅴ(介護福祉士等の配置) サービス類型ごとに一定割合以上の介護福祉士などを配置していること。

※要件Ⅰ~Ⅲについて、2024度中は年度内の対応の誓約で可
※要件Ⅳについて、2024度中は月額8万円の改善でも可

月額賃金改善要件

介護職員等処遇改善加算を取得することで従来の月額賃金を改善する必要があります。

要件区分 加算区分 要件内容
月額賃金改善要件Ⅰ Ⅰ~Ⅳ 新加算Ⅳ相当の加算額の1/2以上を月給(基本給または決まって毎月支払われる手当)の改善に充てる。
月額賃金改善要件Ⅱ Ⅰ~Ⅳ 前年度と比較して、現行のベースアップ等加算相当の加算額の2/3以上の新たな基本給の改善(月給の引上げ)を行う。

※月額賃金改善要件Ⅰは2025年度から適用
※月額賃金改善要件Ⅱは現行ベア加算未算定の場合に適用

職場環境等要件

職場環境等要件は、介護職員が働く環境を整備するために設けられている要件です。

要件区分 加算区分 要件内容

職場環境等要件Ⅰ、Ⅱ

Ⅰ、Ⅱ

6の区分ごとにそれぞれ2つ以上(生産性向上は3つ以上、うち一部は必須)取り組む。情報公表システムなどを用い、実施した取組の内容について具体的に公表する。

職場環境等要件Ⅲ、Ⅳ

Ⅲ、Ⅳ

6の区分ごとにそれぞれ1つ以上(生産性向上は2つ以上)取り組む。

※職場環境等要件Ⅰ、Ⅱについて、2024年度中は区分ごと1以上、取組の具体的な内容の公表は不要
※職場環境等要件Ⅲ、Ⅳについて、2024年度中は全体で1以上

「6の区分」ごとの具体的内容については下記資料で確認できます。
介護職員等処遇改善加算の職場環境等要件(令和7年度以降)|厚生労働省

その他

●申請様式が簡素化されている
事業所が介護職員等処遇改善加算の活用に集中できるよう、今回から様式が簡素化されています。具体的な変更点についてはこちらの資料で確認できます。
介護職員等処遇改善加算の職場環境等要件(令和7年度以降)|厚生労働省

●サービス類型ごとの加算率
新加算についてサービス類型ごとの加算率は下記のとおりです。

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(出典:「処遇改善加算」の制度が一本化(介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります|厚生労働省

よくある質問

Q1:時給や日給の引き上げは基本給の引き上げにあたりますか?
あたります。時給や日給への上乗せで支給する手当についても「決まって毎月支払われる手当」としてみなされます。

Q2:事業悪化などがあった場合に賃金水準を引き下げることは可能でしょうか?
合理的な理由により労使の合意を得る必要があります。また、新加算にかかる賃金改善は、事業所の利益によって変動するインセンティブなどと明確に区分します。

Q3:派遣労働者の介護職員も新加算の対象となりますか?
なります。ただし、新加算を原資とする派遣料などが、派遣元から支給される月給に上乗せされるよう派遣元と調整する必要があります。

Q4:一部の介護職員に賃金改善を集中させても問題ないですか?
新加算の算定要件は事業所全体で賃金をベースアップさせることです。
そのため、職員ごとに金額の差をつけることはできても、一部の職員に集中させることは望ましくありません。「経験、技能のある職員が支給対象になっていない」など、事業所全体で見たときに職務の内容にも見合わなくなるでしょう。

まとめ

介護職員等処遇改善加算を取得して職員に手当を支給することで、事業所は人材確保を強化でき、将来的な企業成長につなげることができます。
今後、日本は少子高齢化が進み、介護需要はますます高まるでしょう。そんな中でより良いサービスを提供するためにも、介護職員等処遇改善加算を上手に活用することが重要です。

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コンノ

公務員として4年間、人事労務の実務経験あり。 これまで100名以上の事業者をインタビューしており、「企業や個人事業主が本当に悩んでいること」を解決できる記事を執筆します。

監修者
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辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を作り出した。
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