企業に義務付けられた制度のひとつに「障害者雇用率制度」があります。
この制度のもと、一定の規模以上の企業は「法定雇用率」を満たすように障害者を雇用しなければなりません。
当記事では、そんな障害者雇用率制度の2024年4月からの変更点について解説します。
最新情報を整理したうえで確実に対応したい企業は、ぜひ当記事をお役立てください。
目次
障害者雇用率制度とは
障害者雇用率制度とは、障害者雇用促進法によって定められた制度で、一定以上の規模の企業が「法定雇用率」を満たすように障害者を雇用する義務のことです(障害者雇用促進法43条第1項)。
障害者雇用制度の対象となる事業主には、次の義務があります。
- 毎年6月1日時点での障害者雇用状況をハローワークに報告
- 障害者の雇用の促進と継続を図るための「障害者雇用推進者」の選任(努力義務)
- 障害者を解雇する場合の「解雇届」のハローワークへの届け出
雇用率を満たさない企業は納付金を支払わなければならず、一方で雇用義務数を上回って雇用する企業には、調整金の支払いや施設設備費の助成などがあります(障害者雇用納付金制度)。
なお、事業主が障害者の雇用に配慮した子会社を設立して、一定の要件を満たす場合には、その子会社に雇用される従業員を「親会社に雇用されている」とみなせる特例もあります。
※「特例子会社」制度の概要|厚生労働省
※下記の記事では、「障害者雇用」の全体像について解説しています
→障害者雇用とは? 企業の義務と罰金(ペナルティ)の有無、納付金の計算方法を解説
障害者雇用率について
民間企業における雇用率は下記の算出方法を基準にして決められています。
障害者の法定雇用率=(対象障害者である常用労働者の数+失業している対象障害者の数)÷(常用労働者+失業者数) |
従業員数の数え方
雇用すべき障害者数は企業規模によって異なり、下記の式によって算出できます。
雇用すべき障害者数(端数切り捨て)=(常用雇用労働者数+短時間労働者数×0.5)×法定雇用率 |
障害者雇用率制度の「障害者」の範囲
そもそも、障害者雇用率制度において「障害者」の対象となるのは、どのような方なのでしょうか。厚生労働省は、下記のとおり定めています。
障害者雇用率制度の上では、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の所有者を実雇用率の算定対象としています(短時間労働者は原則0.5人カウント) (引用:障害者雇用のルール|厚生労働省) |
障害者として雇用するためには、自治体から発行された障害者手帳を持っている必要があります。手帳を持っていない労働者は「一般枠」として扱われるため、障害者雇用率制度の対象にはなりません。
除外率制度について
障害者雇用における除外率制度とは、障害者の雇用が難しい業種において、雇用労働者の計算にあたって除外率に相当する労働者数を控除できる制度です。
2024年現在、除外率は下表のとおり定められています。
・非鉄金属製造業(非鉄金属第一次製錬精製業を除く)・倉庫業・船舶製造・修理業、船用機関製造業・航空運輸業・国内電気通信業(電気通信回線設備を設置して行うものに限る) | 5% |
・窯業原料用鉱物鉱業(耐火物・陶磁器・ガラス・セメント原料用に限る)・その他の鉱業・採石業、砂・砂利・玉石採取業・水運業 | 10% |
・非鉄金属第一次製錬・精製業・貨物運送取扱業(集配利用運送業除く) | 15% |
・建設業・鉄鋼業・道路貨物運送業・郵便業(信書便事業含む) | 20% |
・港湾運送業 | 25% |
・鉄道業・医療業・高等教育機関 | 30% |
・林業(狩猟業除く) | 35% |
・金属鉱業・児童福祉事業 | 40% |
・特殊教育諸学校(専ら視覚障害者に対する教育を行う学校を除く) | 45% |
・石炭・亜炭鉱業 | 50% |
・道路旅客運送業・小学校 | 55% |
・幼稚園 | 60% |
・船員等による船舶運航等の事業 | 80% |
なお、2025年4月に上記の全業種において一律10%引き下げがおこなわれる予定です。
【参考】
障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について|厚生労働省
障害者雇用の現状
令和5年時点での障害者雇用の状況は下記のとおりです。
法定雇用率を満たす企業は全体の半分程度ではあるものの、雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を記録しています。
雇用障害者数:64万2178人(対前年比4.6%増加) 実雇用率:2.33%(対前年比0.08ポイント上昇) 法定雇用率の達成企業割合:50.1%(対前年比1.8ポイント上昇) |
障害者の法定雇用率の改定
令和6年3月まで、障害者の法定雇用率は「2.3%」、制度の対象となる企業は「43.5人以上」でした。この条件が令和6年4月に改定され、雇用対象となる企業が増えました。
詳細を確認していきましょう。
2024年4月より法定雇用率が引き上げに
2024年4月、障害者の法定雇用率が引き上げられ「2.3%→2.5%」となりました。
また、適用対象となる企業の条件も、「43.5人以上→40.0人以上」と拡大されています。
また下表のとおり、法定雇用率は段階的な引き上げが計画されていて、令和8年7月に「2.7%」となる予定です。
令和5年度 | 令和6年4月 | 令和8年7月 | |
法定雇用率 | 2.3% | 2.5% | 2.7% |
対象となる企業 | 43.5人以上 | 40.0人以上 | 37.5人以上 |
【出典】
障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について|厚生労働省
従業員数の数え方
雇用すべき障害者の数を算出するにあたっては、「企業の従業員数」がベースとなりますが、すべての従業員を「1人」とカウントできるわけではなく、労働時間によって数え方が変わります。
具体的には、週所定労働時間が30時間以上であれば「1人」、20時間以上30時間未満(短時間勤務)であれば「0.5人」とカウントします。
【数え方の例】
従業員数100名(うち40名が短時間勤務) 雇用すべき障害者の数=(60名+40名×0.5)×法定雇用率2.5%=2名 |
なお、支店や分店など、同一の企業の中に複数の事業所が設置されている場合は、企業単位でカウントします。
障害者の対象範囲も見直しに
令和6年4月の改定では、障害者の対象範囲についても変更がありました。
具体的に、所定労働時間が10時間以上20時間未満の精神障害者、重度身体障害者、重度知的障害者についても「0.5人」とカウントできるようになりました。
制度上の「障害者」の範囲が広がったということになります。
改正後に求められる対応は?
今回の改正によって、雇用すべき障害者の人数などが変わる企業もあるでしょう。
障害者雇用にあたっては、就業環境の整備や既存従業員への周知、適切な業務振り分けなど、さまざまな準備が必要です。
雇用すべき障害者の数をできるだけ早く整理して、受け入れに向けて進めましょう。
また、法定雇用率を満たしている企業は、調整金や特例給付金などを受給できる場合がありますが、いずれも自分たちで申請する必要があります。自社の状況を踏まえて、手続きを確実に行いましょう。
法定雇用率を満たしていないとどうなる?
企業が雇用する障害者の数が法定雇用率を満たしていない場合、障害者雇用促進法に基づいて、月額50,000円/不足障害者1人の「障害者雇用納付金」を納付しなければなりません。
また、下記の基準のいずれかを下回っている場合は、公共職業安定所より「障害者の雇入れに関する計画」の作成が命じられることがあります。
- 実雇用率が全国平均実雇用率未満でかつ不足数が5人以上
- 実雇用に関係なく不足数10人以上
- 雇用義務数が3人から4人の企業(労働者数150人~249人規模企業)であって雇用障害者数0人
法定雇用率を満たしていない場合の対策
ハローワークへの相談
ハローワークでは、企業の課題を踏まえて障害者雇用の準備から採用、定着までを支援しています。
また、ハローワーク経由で障害者を採用することで受け取れる助成金もあります。
全国に設置されているため、最寄りのハローワークに一度問い合わせてみると良いでしょう。
【参考】
障害者に関する窓口|厚生労働省
就労移行事業者等と連携
就労移行事業所では、就労を目指す障害者が訓練を受けています。
そのため、企業として就労移行事業所と連携することで、自社とマッチ度の高い人材を紹介してもらえる可能性があります。
転職サイトへ求人を掲載する
転職サイトに求人を掲載することで、自社の条件に合う人材からの応募が期待できます。
転職サイトを選ぶ際は、障害者雇用に特化した媒体を選ぶことがおすすめです。媒体側も障害者雇用についての知識が豊富であることが多く、専門的な視点でサポートしてもらえます。
障害者雇用の支援制度
企業として障害者雇用を推進するにはさまざまな費用が発生します。
そこで、おすすめの助成金制度を3つ紹介します。
特定求職者雇用開発助成金
特定求職者雇用開発助成金は、年齢や障害の有無などにより就業機会の確保が難しい「特定求職者」を継続的に雇用するための助成金です。
【支給要件】
- ハローワークまたは民間の職業紹介事業者などの紹介により雇用すること
- 雇用保険一般被保険者または高年齢被保険者として継続雇用することが確実であると認められること など
【支給金額】
対象労働者 | 支給額 | 助成対象期間 |
重度障害者等を除く身体・知的障害者 | 120万円(50万円) | 2年(1年) |
重度障害者等 | 240万円(100万円) | 3年(1年半) |
重度障害者等を含む身体・知的・精神障害者(短時間労働者) | 80万円(30万円) | 2年(1年) |
【詳細ページ】
特定就職困難者コース|厚生労働省
トライアル雇用助成金
トライアル雇用助成金の「障害者トライアルコース」「障害者短時間トライアルコース」は、ハローワークや民間の職業紹介事業者等の紹介により、就職が困難な障害者を一定期間雇用することで受け取れる助成金です。
【支給要件】
- 障害者トライアルコース:就労経験のない障害者や、離職期間が6か月以上の障害者を雇用する場合などに利用できる
- 短時間トライアルコースは、3か月~12か月の期間にわたって、障害者をトライアル雇用した場合に利用できる
【支給金額】
障害者トライアルコース | 対象者が精神障害者の場合は月額最大8万円×3か月、月額最大4万円を3か月(最長6か月間)それ以外の場合は月額最大4万円(最長3か月間) |
短時間トライアルコース | 対象者1人につき月額最大4万円(最長12か月間) |
【詳細ページ】
障害者トライアルコース・短時間障害者トライアルコース・|厚生労働省
障害者介助等助成金
障害者介助等助成金は、障害者の採用や継続的な雇用にあたって、適切な雇用管理に向けた措置を実施した場合に利用できる助成金です。
【主な支給要件】
障害者の雇用にあたって、障害の種類や程度による課題を解消するために「支援員の雇い入れ」をはじめとした介助措置を行うこと。
【支給金額】
障害の程度や措置の方法によって細かく分かれています。
詳細は下記ページにてご確認ください。
障害者介助等助成金|独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構
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まとめ
2024年4月より障害者雇用の法定雇用率が「2.3%→2.5%」と引き上げられ、障害者の対象となる範囲にも変更があります。今回の改定によって雇用すべき数などに変更がある企業は、できるだけ早く採用活動を進めましょう。
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