- この記事では、日本の漁業における人手不足の現状と要因、人材を確保するための解決策を知ることができます。
- 労働環境の厳しさや地方の過疎化の要因もありますが、就業者数が年々減少しているに加えて高齢者の割合が高いことから、人手不足が深刻化。
- SNSなどデジタル技術の活用やUIターン人材の確保など、詳しい解決策を記事内で4つ紹介しています。
日本は、世界でもトップクラスの漁獲水揚げ量を誇っており、古くから漁業が盛んな国です。しかし、近年は少子高齢化や過疎化などを背景に、漁業の人手不足が進んでいます。
実際に、人手不足に悩んでいる漁業従事者の方は多いのではないでしょうか。日本が誇る漁業の衰退を防ぐためには、早期に対策を講ずる必要があります。
本記事では、漁業の人手不足に対する解決策を紹介します。人手不足の現状や理由を踏まえて紹介するため、人手不足に少しでもお悩みの漁業従事者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
漁業の人手不足の現状
はじめに、漁業における人手不足の現状を整理しておきます。下記は、政府統計をもとに、漁業就業者数の推移をまとめたグラフです。
(出典:令和元年漁業構造動態調査報告書|政府統計の総合窓口)
漁業就業者は、一時的な増加はあるものの、調査を開始した1961年から2018年まで減少の一途を辿っています。実際の数値を見ると、1961年に699,200人を記録していた漁業就業者は、2019年には144,740人と、約5分の1です。
また、漁業就業者を年齢別に見ると、人手不足が深刻な現状は浮き彫りになります。下記は、同様に政府の統計をもとにした年齢階層別の漁業就業者数推移です。
(出典:令和元年漁業構造動態調査報告書|政府統計の総合窓口)
漁業従事者は、全体的に50代以上の高齢層が多いと分かります。一般企業だったら定年退職しているケースも多い60代・70代が特に多い傾向です。
高齢の漁業従事者が引退する一方、新たに参入する若者が少なければ、人手不足は進行を続けます。漁業の人手不足は、今後さらに深刻な問題になる可能性が高いでしょう。
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なぜ人手不足に陥るのか
漁業が人手不足に陥っている要因はひとつではなく、いくつかの要因が複合的に影響しています。漁業の人材確保を促進するためには、人手不足が起きている要因の把握が重要です。
漁業が人手不足に陥っている要因としては、下記の3つが挙げられます。
労働環境の厳しさ
漁業を含めた一次産業は「3K(きつい・きたない・危険)」のイメージが強い傾向にあります。
たとえば、漁業は自然を相手にするため、潮の流れや天気など、さまざまな要素が仕事に影響します。時には、予測不能な自然災害に見舞われることもあるでしょう。
また、ほかの業界と比べて、労働時間が不規則である点も特徴です。例として、定置網漁業の場合は、朝4~5時頃の夜明け前に出港し、昼頃を目途に業務を終えます。このような労働時間の不規則性は、漁業への参入を妨げる要因のひとつです。
また、漁業は専門的な技術を要する職人業であり、1人の漁業従事者として認められるためには、見習いの立場で経験を積まなければならないケースもあります。一人前の漁業従事者になるために時間を要することは、漁業がきついイメージをさらに強くしている要因といえるでしょう。
少子高齢化
少子高齢化も、漁業が人手不足に陥っている理由のひとつです。漁業の傾向として、もともと50代以上のベテラン層が多いため、少子高齢化が進めば、比例して年齢層はさらに上がります。
少子高齢化が進むと、重労働を任せられる心配から、若者が漁業を敬遠する可能性があります。結果として、高齢層ばかりが増え、若者が増えない悪循環に陥りかねません。
少子高齢化は今後も進行すると見込まれるため、若者を重点的に採用しない限り、人手不足はますます深刻になるでしょう。
過疎化
過疎化が漁業の人手不足に関わっている側面もあります。少子高齢化や都市部への人口流動を背景に、日本の小さい自治体では過疎化が進んでいます。
下記は、総務省が公表している、市町村数と過疎関係市町村数の変遷です。なお、平成16年、17年に進んだ市町村合併により、同時期は市町村自体が大きく減少しています。
(出典:過疎地域の現況|総務省)
市町村数が減少傾向にある一方で、過疎地域は増加傾向です。直近の平成29年4月1日では、市町村1,718のうち過疎地域は817であり、約半数が該当していると分かります。
漁業は、都市部よりも地方で盛んです。また、家族で経営している場合も多く、小さい村や町であれば、地域総出で漁業を行います。そのため、過疎地域が増えると人手が足りなくなり、最終的に廃業するケースもあるのです。
過疎化が進行している地域で漁業の人手不足を解消するためには、他地域からの人材確保が必要だといえます。
漁業の人手不足の解決策
少子高齢化や過疎化は今後も進行を続けると見込まれるため、何も対策をしなければ人手不足はさらに深刻化するでしょう。漁業の人手不足を解消するには、労働環境の改善や採用方法の見直しといった工夫が必要です。
ここでは、人手不足の解決策を4つ紹介します。
デジタル技術を活用して業務を効率化する
デジタル技術を活用し、業務を効率化する方法があります。
デジタル技術を駆使すれば、危険な業務に人が従事する場面や、全体的な業務量を減らせるでしょう。実際に、水産庁でもデジタル技術の活用によって生産性を高める「スマート水産業」を推奨しています。
たとえば、宮城県東松島市では、KDDIグループと連携をとりながら漁業にかかるデータ収集をシステム化し、事業の効率化を図っています。
KDDIが発明したスマートセンサーブイを使えば、漁獲量が多い場所と塩分濃度の関連性を分析可能です。水温・潮流なども計測できるため、これまで「漁師の勘」に頼っていた部分が定量化し、生産性・効率性が高まります。
(出典:海洋ビッグデータを活用したスマート漁業モデル事業)
デジタル技術を活用する場合は、人材を募集する際のアピール内容に盛り込みましょう。「危険」「きつい」などのイメージが和らぎ、就業を前向きに考えてくれる可能性が高まります。
SNSで情報を発信する
TwitterやInstagram、FacebookなどのSNSを活用する方法もあります。自分たちのアカウントを作成し、漁業や採用に関する情報を発信してみると良いでしょう。
発信内容に興味を持ってくれれば、「働きたい」と感じた人が、連絡をくれる場合があります。一方で、日頃の発信内容やプロフィールを参考に、企業の方から、気になる人材へのアプローチも可能です。継続的に情報を発信すれば、より多くの人に発信内容が届くため、人材を獲得できる可能性が高まります。
ただし、SNSアカウントが認知されるまで時間がかかることや、継続的な運用が必要なことがデメリットになる場合もあります。SNSに強い人が自社にいる場合や、運用を外注できそうな場合に実施するなど、状況に応じて実施有無を判断してみてください。
UIターン就職する人材を狙う
UIターン就職に絞った人材の獲得も有効です。
Uターン就職とは、一度地方を離れて都市部に移った人が、地元に戻って就職することを指します。Iターン就職は、生まれ育った場所ではない地方に就職することです。
漁業は地方を中心に盛んであるため、地方への就業意識が強い人材にアプローチできれば、獲得につながる可能性は高いといえます。
具体的な採用方法としては、UIターン就職向けの転職イベント・セミナーへの参加、求人サイトの利用がおすすめです。特に、東京や大阪などの大都市で開催される転職イベントは、地域ごとに行われる場合があります。地域に興味を持った人材と直接会えるため、アプローチしやすい点がメリットです。
また、地方では都市部よりも求人数が少なく、就職先が限定されやすいといえます。競争相手が少ないため、漁業の魅力を伝えられれば、前向きに就業を検討してくれる人が増えるでしょう。
特定技能外国人を雇用する
特定技能外国人の雇用も、漁業の人手不足を解消する方法のひとつです。「特定技能」とは、2019年に新設された在留資格であり、一定の技能・専門性を有していることを表します。人手不足が深刻な分野でのみ、特定技能を有する外国人の受け入れが認められており、漁業は受け入れ可能な産業です。
特定技能外国人の採用方法は、下記の2つです。
- 雇用契約を直接結ぶ
- 労働者派遣事業者から派遣してもらう
ただし、漁業分野で特定技能外国人を受け入れるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。条件の詳細は下記の水産庁HPで公開されているので、かならず事前に確認してください。
まとめ
漁業の人手不足は年々進行しており、漁業従事者は約60年の間に5分の1ほどに減少しています。「労働環境の厳しさ」「少子高齢化」「過疎化」などが、減少の要因です。社会的背景や漁業の性質が影響しており、工夫をこらさなければ人手不足の解消は難しいといえます。
本記事では人手不足を解消するための解決策を4つ紹介しましたが、自分たちの採用サイトを作りたいと考えているケースもあるでしょう。
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